15歳で結婚したローザは、セルビアでロマ人(ジプシー)として、ロマの風習に従っていた。ロマの新婚夫婦には、結婚して1年以内に子どもを授かることが期待されるのだが、ローザと夫は子どもを授からなかったため、彼らはロマの間で不名誉な者とされ、若いカップルは失意に沈んだ。そこで彼女の両親は、2人を助けるためにいろいろな方法を提案した。
「私はひどく落ち込み、いつも泣いていました。あまりに暗く沈んでいたので、友人が私を心配して、知り合いの女性たちの集まりに誘ってくれました。その集まりでは、イエス・キリストについて話すというので、子どもが与えられず悩んでいた私は、是が非でもその話を聞かなければいけないと思いました」
「結果的に、その集まりに参加したことは大正解でした。私の重荷、痛み、悲しみは、全てイエスが担い引き受けてくださったと聞いて、私はそれを受け入れました。そして私は、それが真実の言葉であることを知りました。その時以来、私はイエスに従い始め、重荷は主に委ねたのです」。ローザは、顔に喜びをたたえて語った。
ローザはイエスの信者を家に招いて、夫にもイエスの話をしてもらった。そしてその夜、夫もイエスを受け入れたのだ。若い夫婦は、共にイエスの信者となった。彼らは信者仲間に、子どもを授かるように祈ってほしいと頼んだ。そしてほどなくしてローザは妊娠し、元気な男の子を出産したのだ。
「私は自分の証しを分かち合い、人々にイエスを信じるように勧めています。神は、他の人々を神に近づけるために、私の人生の不妊の悲しみを喜びに変えて用いてくださったのです」。ローザは深い感謝をもって語った。
聖書を読むと、時代の鍵となるような悲哀の女性たちがたびたび登場する。いわゆる不妊の女だ。アブラハム、イサク、そしてヤコブら族長たちの妻は、皆、不妊の女性たちだった。サムエルの母ハンナや士師サムソンの母も不妊だったし、新約の時代ではバプテスマのヨハネの母エリサベツも、老年になるまで子どもが与えられなかった。
聖書時代において、子どもを授からない嫁は、役立たずのかい性なしとして、厳しい風当たりを受ける。古風な価値観で生きているロマ人の女性にとっても、聖書時代同様に、子どもが与えられないことに対する評価や風評は厳しいのだろう。
しかし神は、ローザの心の痛みと悲しみを用いて、神の恵みと憐(あわ)れみを伝える器とされた。恵みの神をたたえよう!
既成の社会から疎外されているロマ人だが、彼らの間に福音が力をもって広がっている。神は有力な者を無力にし、知者を辱めるために、あえてこの世の無きに等しい者を用いられる。このようにして、等しく全ての者が、創造主の前に膝をかがめるのだ。
ロマ人たちが、主の御手の中で用いられ、栄光が神のみに帰される働きと伝道が前進するように祈っていただきたい。
■ セルビアの宗教人口
正教関係 73・7%
プロテスタント 1・7%
カトリ ック 5・0%
英国教会 0・01%
イスラム 16・1%
ユダヤ教 0・02%
無神論者 3・5%