今から9年前の6月、私たちは日本宣教拡大を目標に、ブレス・ユア・ホーム(株)を設立し、有効な宣教手段を探り始めました。長年、滞りがちな日本宣教を振り返り、日本人に寄り添う、新しい宣教の仕組みを創出するのが目的でした。
その中で、節目ごとに祈る習慣を持ちながら、祈り心を表現できない日本人の日常に着目し、冠婚葬祭の集いに合わせ、牧師(教会)が寄り添い、心に届く言葉で祈らせていただく仕組みを考え始めました。
すでに実績のある結婚式の他、結婚の誓いの更新、葬儀、記念会、納骨式なども有効な機会として、検討を進めました。
冠婚葬祭事業者との関係
日本の冠婚葬祭には、多くの事業者がさまざまなサービスを展開しています。特に参列者が比較的多く、宗教者が関わる節目の祈りでは、冠婚葬祭事業者が背後で支えることが多くなっています。
これらの事業者は、宗教者の行う儀礼を支えるだけでなく、あらゆるサービスを取り込みながら、付加価値のあるイベントを創り上げ、事業性を高める企業努力を行ってきました。現代社会では、彼らの存在は欠かせないため、彼らとの関係を良好に保ち、宣教拡大に協力していただくことは大切な要素と考えました。
牧師が主導できない結婚式
キリスト教結婚式が増え始めた1960~70年代において、教会の牧師が結婚式を主導し、牧師の指示のもと、全てが行われていたように思います。地域教会が果たした役割も大きかったことでしょう。
やがて、結婚式場やホテルが専用のチャペルを作り、衣装、食事、音楽、司会、写真、送迎、その他多くのサービスを提供するようになりました。それぞれのサービス提供には、専門の人材が必要なため、さまざまな事業者間の連携が進み、やがて、人材を派遣する派遣事業者が用いられるようになりました。
多くの事業者が競合するようになり、品質と価格の競争が進んだため、派遣事業者の中で働く人々への要求が増し、人件費が抑えられました。最近では、司式牧師まで派遣事業者が手配するようになったため、牧師が主導できる領域はかなり限られてしまいました。
私自身が派遣事業者の依頼に応え、司式に対応した結婚式では、新郎新婦との個人的な接触は禁止され、事業者が説教を含めすべての内容を決め、司式料は極めて低額でした。最近では、ルックスの良い外国人(偽牧師)がアルバイトで司式に対応することが多いようです。
先日、大手の冠婚葬祭事業の責任者にお聞きしたところ、本物の牧師による司式を一度も経験したことがないとのことでした。
キリスト教葬儀拡大における懸念
結婚式をもう一度牧師や教会が主導できるようにすることは、宣教拡大にとって極めて大切です。そのための仕組みづくりを検討していますが、一方で、葬儀においても同じような状況が進みつつあることを懸念しています。
高齢化の進んだ日本社会では、葬儀件数自体は増加していますが、核家族化の影響で、葬儀の規模は小さくなり、葬儀単価がかなり低下しています。
全国に約6千もある葬儀社が、葬儀単価の維持と依頼件数の確保でしのぎを削っています。葬儀会場、遺体安置、搬送、司会、音楽、棺、衣装、生花壇、送迎、食事などのサービスに付加価値がつけられ、利益を確保する競争が激しくなっています。
江戸時代から続く檀家制度の下、宗教者は各家庭が手配するのが普通でしたが、最近では事業者が手配することが多くなりました。僧侶派遣を担う事業者が牧師を手配し、キリスト教葬儀に対応することも増えています。
人気のない仏式葬儀が、いまだに80パーセント近くを占めていますが、家の宗教に縛られない世代が増えるにつれ、キリスト教葬儀は増加傾向にあります。今後、大手の事業者がキリスト教葬儀に注力すると予想され、牧師が主導できない結婚式と同じような事態が、キリスト教葬儀でも起こることが懸念されます。
弱さに寄り添える「善き隣人」
冠婚葬祭事業者は、依頼件数を確保するため、事前の相談窓口を設け、営業活動を積極的に実施しています。葬儀においては、ネットを通して葬儀に関わる情報を伝え、生前の相談会を実施するなど、終活全般に関わろうと画策しています。
しかし葬儀社や僧侶が「死」を目前にした当人やその家族に、直接寄り添うことは非常に難しく、さまざまな知恵を働かせ、生前から葬儀予約を獲得しようとしています。
一方、宣教を目的とする私たちは、弱さを抱える人々の「善き隣人」になることを目指しています。葬儀や結婚式、その他全ての事業に関わることは、その延長に過ぎず、全てが「善き隣人」になることを補完する働きです。
2年前から始めた(一社)善き隣人バンクの働きは、弱さを抱える全ての人を対象としています。ほとんどが冠婚葬祭とは関係のないケースですが、中には「死」を目前にして「善き隣人」を求める方もおられます。
その際、私たちがブレス・ユア・ホームを通し、葬儀に対応できることは、依頼者にとって大きな安心材料になります。日ごとに弱っていかれる方の傍らに寄り添い、「善き隣人」となり、祈りをもって支え、天国を示しつつ看取りに関わるなら、当人はもちろんのこと、葬儀やご家族の祈り心にも、深く関わることになるのです。
教会が事業者を主導して宣教が拡大する
最近、そのような働きを進める私たちを知り、さまざまな事業者から、連携を求める誘いを受けるようになりました。その中には、キリスト教葬儀に関わる事業を全面的にサポートし、宣教拡大に協力をいただける一般の事業者も現れました。
宣教は、イエス・キリストが私たちの「善き隣人」になってくださったように、私たちが、弱さを抱える人の「善き隣人」になることです。そして、そのような宣教の働きと連携し、依頼者の必要に心を込めて応えることが、事業者にとっても、優れた企業活動になることを理解していただけたように思います。
私たちは、「善き隣人バンク」の働きを中心に、日本宣教を拡大させたいと思います。そして、その働きを補完する多くの事業を、協力を申し出てくださる事業者との連携によって展開したいと考えています。
やがて、牧師(教会)が、事業者の働きに組み込まれるのではなく、多くの事業者を主導し、日本の祈りの文化を主体的に支えるようになることを、私たちは夢に描いています。
神様の祝福が日本の各地にあまねく届けられますように・・・。Bless your home! !
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