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ジョン・バンヤンの生涯

天国への旅―ジョン・バンヤンの生涯(11)新しい家族

2023年5月31日19時12分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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天国への旅―ジョン・バンヤンの生涯(1)鋳掛屋の子+
ジョン・バンヤン(1628〜88)の肖像画(英国立肖像画美術館所蔵)

1658年。バンヤン家に大きな悲しみが襲った。妻マーサが、ふとした風邪がもとで肺炎を起こし、看病のかいなく亡くなったのである。あとにはメアリー、ジョン、トマス、エリザベスと4人の子どもが残された。

バンヤンは本業の鋳掛屋をして働きながら、子どもたちの世話や食事の支度をしなくてはならなかった。盲目の長女メアリーは8歳、長男ジョンと次男トマスは7歳と6歳、そして次女エリザベスはまだ4歳だった。

子どもたちは、けなげにも父親を慰めようと、悲しみをこらえつつ、家事の手伝いをするのだった。バンヤンは、彼らがいじらしくてたまらなかった。

「お母さんは死んじゃったんじゃなくて、神様のおうちにいるのね」。メアリーは、見えない目を天に向けて言った。必死でそう信じ、また自分の弟や妹たちにそう言い聞かせるのだった。

バンヤンは、メアリーの金髪をきれいにすき、三つ編みにしてやりながら、力を込めて言った。「お母さんは、神様のおうちから、みんなが仲良く助け合って毎日過ごせるようにとお祈りしているよ」

「でも、お父さんって偉いなあ」。長男のジョンは、バンヤンを力づけるように言った。「一日中仕事をしてさ、教会に行ったらみんなの前でお話をして、それだけでなく、僕たちのためにおいしいご飯を作ってくれるんだもの」

「そう」。バンヤンは、パチンと手をたたいた。「お父さん頑張っちゃうんだ。だって、こんなにいい子たちがいるんだからね。みんなはお父さんの宝だよ」

そう言って、彼らの頭をなでてやるのだった。それから夕飯が済むと、後片付けをしてから、みんなで丸くなってお祈りをするのだった。

さて、そんなある日のこと。外で遊んでいた子どもたちが、手にお菓子を持って帰ってきた。誰にもらったのかと聞くと、「エリザベスおばさん!」と彼らは声をそろえて言う。また別の日に、絵本をもらって帰ってきたので、また尋ねると、やはり「エリザベスおばさん!」と彼らは言うのであった。

はて、この人は何者なのだろうと、バンヤンが近所の人に聞いてみると、彼女はバプテスト教会の信徒の一人で、婦人会があって集まるときに教会の門の所で遊んでいる彼らに対して何かしら持たせてくれることが分かった。

バンヤンはある日、この「エリザベスおばさん」に礼が言いたくて、婦人会のある日に教会に行き、ついに会うことができた。まだ若い女性で、軍人であった夫に死に別れ、寡婦となった彼女は教会での奉仕だけを生きがいにしていたのだった。

それから間もなく、バンヤンはジョン・バートン牧師から彼女との再婚を勧められた。

「それは大変ありがたいお話ですが、子どもたちに聞いてみませんと」。こう言って家に帰ったバンヤンは、4人の子どもを呼んで言った。「ねえみんな、エリザベスおばさんのこと好きかい?」「大好き!」と子どもたちは声をそろえて言った。

「それでね、牧師先生から、エリザベスおばさんにみんなのお母さんになってもらったら――って話があったんだけど、どう? もしみんなが嫌なら、お父さんこの話断るけど」

「つまり、結婚するってことでしょ?」メアリーが、ませた口調で言った。「まあ、そういうことになるかな」。すると、子どもたちはメアリーを真ん中にして、何やら話し合っていたが、一斉に「賛成!」と叫んだ。

こうして1659年。バンヤンは信仰あつく聡明な女性エリザベスと再婚したのだった。エリザベスはバンヤンにとって申し分ない妻、そして子どもたちにとって申し分ない母となった。間もなくバンヤンの家から子どもたちの笑い声や歌声、そして晴れやかな女性の声が聞こえるようになった。

やがて2人の間にセアラとジョーゼフが生まれると、鋳掛屋の子どもたちは6人となった。先妻との間にできた4人の子どもたちは、エリザベスとの間にできた2人の子どもをそれはもうかわいがって、まるで奪い合うようにしてあやしたり、揺り籠を揺らして寝かしつけたりするのだった。

こうして十分に満ち足りた生活を送る中で、バンヤンは久しぶりにペンを取り、『開示された律法と恩寵の秘義』という名著を書き上げ、出版したのである。

*

<あとがき>

新生を体験し、希望に満ちた人生を歩み始めたバンヤンに新たな試練が見舞います。最愛の妻マーサが肺炎で亡くなったのでした。バンヤンは男手一つで4人の子どもを育てなければなりませんでした。

しかし彼は、この試練も神の御心と受け止め、鋳掛屋をして働きながら子どもたちの世話をし、食事作りその他の家事もこなしていきました。

そんな時、彼の前に現れたのがエリザベスという寡婦でした。彼女は信仰あつく、心が優しい――しかも子どもが好きな女性で、バンヤンはバートン牧師の導きで彼女と再婚したのでした。

子どもたちは皆、この新しい母になついたので、バンヤンは以前のように温かな家庭を築くことができたのでした。バンヤンの家からは常に祈りと賛美の歌声が聞こえ、道行く人の足をとらえたといわれています。

そして、この二度目の妻との間にさらに2人の子どもを授かり、バンヤンの人生はまさに恩寵あふれるものとなったのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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