古代シリア語ペシッタ(直訳)版聖書の一つを紹介します。これは、クルジスタンで発見されたエストランゲロ式書体のヨハネ福音書3章の部分です(9〜13世紀作、イラン国立図書館蔵、『THE CHURCH OF THE EAST』[57ページ]より)。この中の16節を訳しました。赤枠の中が16節です。
作成年代は4年前後の開きがありますが、私が所蔵しているペシッタ版新約聖書ヨハネ3章16節の部分を比較しても同じです。
「なぜなら神は独り子を与えたほどに世を愛した。全て彼を信じる者が滅びないで、永遠のいのちを持つためである」(私訳)
ヨハネ福音書3章16節は、聖書の中の聖書といわれるほど、聖書の神の人に対する変わらない愛と永遠の救いの約束が一言で語られています。それ故、世界の多くの人々に愛されてきた聖句でもあります。
全世界の古代の人々も、この聖句に救いの確信と神への信仰・信頼を置いて信仰生活をしていたこと、約束された神はいつの時代も、永遠に生きて働かれる真実なお方であることを信じ、これからも、この福音が全世界の人々に伝えられていくことでしょう。
もう一つ、シリア語ペシッタ版マタイ福音書1章18節を訳してみました。
ちなみに、新改訳2017では「イエス・キリストの誕生は次のようであった。母マリアはヨセフと婚約していたが、二人がまだ一緒にならないうちに、聖霊によって身ごもっていることが分かった」、新共同訳(1989年発行)では「イエス・キリストの誕生の次第は次のようであった。母マリアはヨセフと婚約していたが、二人が一緒になる前に、聖霊によって身ごもっていることが明らかになった」と訳されています。
救い主イエスは、聖霊によってマリアの胎に身ごもり、そして生まれましたので、聖なる方、神の子と呼ばれました。このお方によって、神の救いがもたらされました。
※ 参考文献
『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、イーグレープ、2014年)
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