米ノースカロライナ大学(UNC)チャペルヒル校の発掘調査チームが、旧約聖書に登場するヒロイン2人が描かれたモザイク画を、イスラエルのガリラヤ地方で発見した。この種のものとしては初めての発見だという。UNCが5日、ホームページ(英語)で発表した。
UNCのジョディ・マグネス教授の指導の下、10年にわたり、地道な発掘作業を続けてきた学生と専門家からなる調査チームは、ガリラヤ湖の北西岸に位置する都市ティベリアの北にあるフコクで、古代ユダヤ教のシナゴーグから約1600年前のモザイク画を発掘した。
新型コロナウイルスの感染拡大により発掘作業は一時中断を強いられたが、この「フコク発掘プロジェクト」(英語)が10年目を迎える中、調査チームは、研究者らが紀元前4世紀後半から5世紀前半に建てられたと考えているシナゴーグの南西部に焦点を当てた。
シナゴーグの床は、大きなモザイク画のパネルで飾られており、パネルは3つの水平な帯(レジスター)に分かれ、それぞれが旧約聖書の士師記の物語を表現しているとマグネス氏は言う。
発掘されたモザイク画に描かれていた女性2人は、イスラエルの女預言者で士師(さばきつかさ)であったデボラと、カイン人(ケニ人)へベルの妻ヤエル。共にイスラエルの民をカナン人から解放する上で重要な役割を果たした。
士師記4章によると、デボラの預言を受け、バラクは指揮官となりイスラエルの軍勢を率いて、将軍シセラ率いるカナン人の軍勢と戦う。自身の軍勢が混乱に陥ったシセラは、ヤエルの天幕に逃げ込む。ヤエルはもてなす素振りを見せるが、シセラが眠っている間に天幕の釘をこめかみに打ち込み、シセラを殺害。イスラエルの勝利において決定的な役割を果たすことになる。
モザイク画は、この士師記4章の場面を描いたものとされ、盾を構えたバラクと、なつめやしの木の下からそれを見つめるデボラの姿が描かれている。また、中段はわずかしか残っていないが、下段には血を流して地面に倒れているシセラの姿が描かれているという。