福島県沖を震源とする16日の地震では、宮城、福島の2県で最大震度6強の揺れを観測した。被害は2県を含む全国13県に及び、22日時点で3人が死亡、231人が負傷し、237棟の住宅が半壊や一部破損の被害を受けた。本紙は地震発生の翌日から、宮城県内で震度6強から6弱の揺れを観測した登米、石巻、名取の3市の教会に連絡を開始し、被害の有無を取材。16教会の関係者から状況を聞いた。
■ 登米市(震度6強)
国立ハンセン病療養所「東北新生園」の敷地内には、カトリック新生園教会、日本新生キリスト教会新生園伝道所、キリスト教信交会の3教会がある。療養所の関係者によると、地震後に当直が巡回したところ、外側からは被害が見当たらなかったという。
登米市の佐沼ハリストス正教会や石巻市の石巻ハリストス正教会などを管轄する田畑隆平司祭は、「石巻、佐沼をはじめ、私が管轄している5つの教会では、聖堂・会堂の被害はありませんでした。信者の自宅に関しては、足の踏み場もないほどに家の中がめちゃくちゃになってしまったという声はかなり聞きましたが、けがなどはないようです。昨年2月にもマグニチュード7・3の地震がありましたし、こうやって大きな地震が定期的に続くのは、たとえ家の倒壊や津波の被害などはなくても、結構なストレスになっていると思います」と述べた。
イエス福音教団宮城教会は、会堂、信徒宅共に被害はなかった。日本基督教団登米教会の佐々木栄悦牧師は、「本棚が倒れたりしましたが、守られました。感謝です」と語った。
■ 石巻市(震度6弱)
ビーワン教会のチャド・ハドルストン宣教師は、地震直後の17日午前2時、自身のフェイスブックに次のように投稿した。
「今回の地震は私が経験した中で最も強いものでした。現在ですら比較的小さな余震が続いています。私たちのチームのみんなと教会、友人らは皆大丈夫のようです。私たちの家ではたくさんの本棚と食器が落ちて壊れました。しかし、ひどすぎるものはありませんでした。私たちは近所の人たちと近くの山に登り、津波警報が終わるのを待ちました。私たちの地域の人々の緊張感と心のためにお祈りください。多くの人が11年前のフラッシュバックに苦しんでいます。私たちは11日に地震・津波・原発災害の記念行事を行ったばかりです。ですので、まだ人々の脳裏には鮮やかに残っています」
この同日、本紙の取材に応じたハドルストン宣教師は、「被害は11年前に比べれば大きくはありませんでした。しかし、人々の心に及ぼされたショックは大きいものでした。皿も割れて物がたくさん落ちたので、今日は片付けをしながら過ごしました。しかし、最も重大なことは、石巻にいる私たちの友人たちが経験しているトラウマです」とコメント。「私たちは近所を回って人々と対話し、彼らの話を傾聴しました。皆さん全員が3・11(東日本大震災)を思い出したと述べていました」と語った。
カルバーチャペル石巻のリチャード・ギデンス牧師は、市内で喫茶店「ジェイズカフェ」も経営している。教会、カフェ共に少なからず被害があったという。この地域に住む知り合いのクリスチャンの家のほとんどでは、物が落ちるなどし、ある女性の家では、皿のほとんどすべてが割れる被害があったと話した。
「大部分の人々が望む祈りは、安眠だと思います。余震がたくさん来ているので眠れず、くたくたになっているのです。神様がこの状況を用いてくださり、2011年の地震と津波を経験した人々の心をもう一度呼び起こしてくださるようお祈りください。たくさんの人々が神様に立ち返ったのですが、またかたくなになった人もいます。コロナ禍と今回の地震を通して、多くの人が(主を)見上げる助けを得たのかもしれません」
保守バプテスト同盟いしのみなと教会の金谷政勇牧師は、「かなり強い地震でしたが、教会員、家族とも皆無事です。不安な夜を過ごされた方々も多かったと思います。今は余震に警戒しつつ過ごすようにしています」と語った。
石巻聖書バプテスト教会の関係者や信徒は無事だった。教会員の岡本永司さんは、「真夜中に地震が来たのでびっくりしました。他の教会の方々は避難された方もたくさんいました。地震はもう強いものは来ないと思う方も結構いらっしゃるのですが、それは私たちの感覚で、自然はもっと大きなスケールですね。どこにも地震がもう来ないという保証がないのではないでしょうか」と語った。
日本基督教団石巻山城町教会の関川祐一郎牧師は、「昨晩はかなり大きな揺れでしたが、幸い私たち家族も教会も大きな被害はありませんでした。津波注意報も解除されホッとしています。引き続き余震に気を付けたいと思います」と述べた。
渡波キリスト教会の代表を務める小沢倫平さんは、「渡波は沿岸部なので、車で高台に避難しようとしましたが、渋滞で動かず、家に引き返しました。東日本大地震でも、家の2階に避難して助かった例が多かったので、そう判断しました。家の被害はありませんが、教会ではいろいろな物が倒れて、本などが散らかっていました。片付けが大変です。教会員は全員無事でした」と語った。
カトリック仙台教区によると、カトリック石巻教会を含め、教区内の教会からは17日の時点で被害の報告はないという。
■ 名取市(震度6弱)
キリスト道教会アライブの藤本仕光牧師は、「特に目立った被害はありませんでした。教会員も皆守られました。感謝です」と述べた。
日本基督教団名取教会の荒井偉作牧師によると、同教団の同じ地区内の教会では、大規模な被害の報告はこれまでのところなく、人的被害もないとみられるという。しかし、程度の差はあれ、内壁や外壁が破損したり、崩落したりし、食器類や家具、電化製品にも被害が出た。
同教団に属する複数の教会は、昨年2月の福島県沖地震でも被災しており、修復工事を終えたばかりだったという。「今回もほぼ重複する教会で、小規模ながら修復工事が必要となるでしょう。(大規模な地震は)東日本大震災からすでに3回目となります。教会員の自宅(の被害)も、小規模ながらかなりの件数になりそうです。全国の皆様よりご加祷いただければ幸いです」と語った。