主の羊クリスチャン教会の中川晴久牧師が、オウム真理教元幹部で「ひかりの輪」代表の上祐史浩(じょうゆう・ふみひろ)氏が司会をするイベントに出演し、「失敗した人間、罪人が新しくされるのがキリスト教の力」など、上祐氏に自身の信仰と見解を語った。
イベントは「コロナ禍で宗教が消滅の危機!?大転換期の宗教の未来を探る!仏教・キリスト教の現場から」と題したトークショー。サブカルチャーの殿堂ともいわれる新宿ロフトプラスワンを運営するロフトプロジェクトのオンラインライブとして3月に開催され、中川、上祐両氏に加え、雑誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏も出演した。
新型コロナウイルスの感染拡大により日本では宗教が後退気味ではないかとの問い掛けに、中川氏は、日本のキリスト教は主に戦後キリスト教徒になった世代が支えてきたと説明。日本人キリスト教徒の数は減少傾向にあるものの、日本に移住・滞在している外国人キリスト教徒は増加しており、勢いよくコミュニティーを形成しつつある現状があると述べ、キリスト教以外の宗教との違いを指摘した。その上で、日本の文化や伝統の良い部分をキリスト教がくみ取っていく必要性を訴えた。
上祐氏がオウム真理教を宗教の失敗例として挙げると、中川氏は、奴隷商人から牧師になった英国のジョン・ニュートンが、日本でも有名な賛美歌「アメイジング・グレイス」を作詞したことを示しつつ、失敗した人間、罪人であっても、新しくされるキリスト教の力を強調した。
中川氏は「こんな(罪深い)人間にも神様が触れてくださる。本当に失敗した、ダメだった、やっちまったという人を回復させる力がある」とし、「本当に失敗した人間、罪人が新しくされる、というところにその力がある。それは何かというと、失われたもの、失われた心をもう一回取り戻すこと。それがキリスト教の大きな力なのだと思う」と語った。
東京キリスト教神学研究所の幹事を務め、カルト研究も行っている中川氏は、カルトの脱会者から学べることについても強調した。中川氏は、カルトですら人から人間性や理性を100パーセント奪うことはできないとし、カルトの脱会者はたとえ90パーセントを奪われたとしても、残された10パーセントの人間性や理性の大切さに気付いた人だと述べた。
上祐氏が司会をするイベントに出演した経緯について、中川氏はオウム真理教の脱会者を教会に招き、話を聞いたことがきっかけだったと話す。しかし上祐氏は、現在もオウム真理教の後継団体から派生した「ひかりの輪」の代表を務めている。上祐氏を「脱会者」と見なすのか。中川氏は本紙の質問に対し、「私の目から見て『脱会者』です。でも、世間がまだまだ許さないでしょう。それに私自身、真実を知っていると自信をもって言い切れるものでもないです。だから、半々でもあります。性急な結論は避け、10年かけて様子を見るくらいのつもりです。だからこそ、今何を思い、何を大切にし、何に気付かされたのかを聞きたいと思います。上祐さんにはこれまで、キリストとの出会いがありませんでしたから、(キリストを)伝えた後の話も聞きたいです」と答えた。
カルトの脱会者から話を聞くことについて、中川氏は「自分自身をあえて被害者の位置に置くことをやめ、自分自身の問題として昇華した『脱会者』からは特に学ぶものがあります」と話す。
「普通の人が持つことのできない真珠の洞察を得ているからです。真珠というのは、真珠貝の傷から出た血液が結晶化してできます。真珠の洞察とは、生きる中で受けてしまった傷からできるものです。私の主イエス・キリストはボロボロの傷だらけの姿で十字架にかかった神の子ですから、やはり自分自身の傷と痛みを重ねることで教えられることが多いのだと思います」
「現在のカルトや異端に対する取り組みはデタラメが多いです」と話す中川氏は将来、カルトや異端の専門家チームを作り、さまざまな脱会者からの話を聞きたいと考えているという。