「ナルニア国物語」シリーズの作者として知られるC・S・ルイス(1898~1963)の半生を描いた映画が年内にも公開される。映画は、キリスト教の家庭に生まれながらも青年時代に無神論に陥り、その後キリスト教信仰に立ち返るルイスの回心が中心的な内容だという。
英ガーディアン紙(英語)によると、監督はこれまでにもルイスの半生を描いた作品を手掛けてきた経験のあるノーマン・ストーン。米舞台俳優マックス・マクリーンの一人芝居「The Most Reluctant Convert(最も気の進まない改宗)」が原作。2016年に米国で初上演された原作は、観客10万人以上を動員し絶賛を受けた。映画も同じ作品名となる予定。
映画は、20世紀の最も影響力のあるキリスト教作家の一人として知られているルイスの半生を、3つのステージに分けて描く。一つは幼少期にがんで母親を亡くす経験、もう一つは第1次世界大戦時に塹壕(ざんごう)で体験した恐怖、そして愛する妻の死。
英国人俳優のニコラス・ラルフが20代のルイスを演じ、同じく英国人俳優のトム・グレニスターがルイスの友人で『指輪物語』の作者として知られる作家仲間のJ・R・R・トールキン役で出演する。マクリーンは、本作でも年老いたルイス役を演じる。撮影は、ルイスが英文学を教えていたオックスフォードとその周辺で行われた。ルイスが教鞭を執っていたオックスフォード大学のモードリン・カレッジや、「ナルニア国物語」シリーズ執筆の場ともなった「キルンズ」と呼ばれるルイスの自宅でも撮影が行われた。
ルイスの半生と愛を描いた映画「ある作家と死」(原題:Shadowlands、1985年)により、英国アカデミー賞で監督賞を受賞したストーンは、ルイスの物語を再び映画化するのに今が絶好のタイミングだとし、同紙に次のように語っている。
「どのような影響があろうと、ルイスは真実を見つめていました。それは彼の文にも表れており、彼を人気者にした重要な要素の一つです。社会が『もう少し深く考えよう』と言うときがあります。新型コロナウイルスのようなものに直面するとき、私たちは物事についてもう少し考えるべきであり、私はそれが今起こっていると思っています」
ストーンはまた、「ナルニア国物語」のファンサイトに600万人もの会員がいることや、新型コロナウイルスの感染が広がる中、ルイスの作品の売り上げが伸びていることに触れ、映画への期待を語った。
ルイスについて「精力的な宗教の論破者」から「20世紀で最も尊敬されるキリスト教作家・弁証家」に変わったと話すマクリーンは、ルイスが探求した問題は複雑で、それを演劇で表現するのは大きな挑戦だったと言う。
「しかし、私たちが使う言葉はルイスの言葉です。私たちはその権利を所有しています。私たちは彼ほど賢くはないので、とても助かっています。この役を演じることの素晴らしさの一つは、これだけ頭が良い人に90分間にわたってなりきることができ、その言葉を語ることができ、それを本当に体現することができる楽しさにあります」
米キリスト教テレビ局「CBN」(英語)によると、映画の製作は、ニューヨークに拠点を置くキリスト教団体「舞台芸術フェローシップ」(FPA)から財源的な支援を受けている。FPAはマクリーンが設立した団体で、英国にあるC・S・ルイスの著作権管理会社から製作に必要な権利を買い受けているという。
製作は、アガサ・クリスティの推理小説『ナイルに死す』を原作とした今年公開予定の「ナイル殺人事件」(Death on the Nile)で製作総指揮を務めたマシュー・ジェンキンス、ディズニーの「ライオン・キング」で製作陣の一人を務めた経験のあるケン・デニソンら。2人は同紙に、年内には公開できることを期待していると話している。