キリスト教精神に基づき世界の子どもたちを支援する国際NGO「ワールド・ビジョン」は、紛争の影響を受けるエチオピア北部のティグレ州に対し、新たに10億円を超える規模の追加支援を決めた。エチオピアではすでに約5万人の難民が発生し、230万人の子どもたちが人道支援を必要としているとされており、日本でも緊急支援募金の受け付けが始まった。
エチオピアでは昨年11月、アビー・アハメド首相率いる現政権と北部の少数民族の対立が武力衝突に発展。同月末には、アビー政権率いる連邦政府軍がティグレ州の州都メケレを制圧したものの、同州政府を率いるティグレ人民解放戦線(TPLF)との戦闘は今も続いている。
新型コロナウイルスの影響以前にも、長年続く不安定な降雨による局地的な洪水や干ばつ、バッタなどの大量発生に見舞われ、さらに近年は民族間対立による武力衝突で300万を超える人々が故郷を追われるなど、エチオピアの情勢はすでに逼迫(ひっぱく)していた。そこに今回の戦闘が加わったことで、さらなる人道危機が起こっている。
国連人道問題調整事務所(OCHA)の昨年12月7日の報告によると、激化した武力紛争、インフラの破壊、数十万人にも及ぶといわれる国内避難民の発生をきっかけに、約5万人が難民となって隣国スーダンに逃れた。
ワールド・ビジョン・エチオピアのエドワード・ブラウン事務局長は、「われわれはとても悲惨な状況に直面しています」と語る。「この危機によって、何千人もの子どもたちが、1カ月以上、水、食料、電気がない状態で、劣悪な環境下での生活を強いられています。また、ワールド・ビジョン・エチオピアのスタッフとその家族も同様の境遇に立たされています」
エチオピア政府と国連は昨年11月末、政府が管轄するティグレ州の脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人々に対し、人道支援を実施することで合意した。だが、不安定な情勢が続き、合意内容の具体的な実現にはいまだ至っていない。国連児童基金(ユニセフ)は、エチオピアでは230万人の子どもたちが人道支援を必要としていると推定している。
「このティグレ州の危機は、すべての問題の中で最大の脅威」とブラウン氏は訴える。「この危機的な状況下にある子どもたちに寄り添うため、ワールド・ビジョンは困難を乗り越えるための祈りと支援を必要としています」
ワールド・ビジョンはすでに、ティグレ州の緊急援助で150万ドル(約1億5600万円)規模の支援を実施した。だが、現地の甚大な被害状況から、新たに1千万ドル(約10億3700万円)規模の追加支援を決定。世界の支援者にさらなる協力を呼び掛けている。寄付は、ワールド・ビジョンの日本支部であるワールド・ビジョン・ジャパンのサイトで受け付けている。