母国語の聖書を持たない人々が母国語で聖書を読むことができるようにと、聖書翻訳事業を行なっているウィクリフ聖書翻訳協会にこのほど、5000万ドル(約47億9000万円)の匿名による献金が贈られた。今回の献金額は、75年の歴史を持つ同団体でも最高額。2025年までに聖書翻訳と並行して、2億人以上の人々の識字力向上を目指す同団体の活動に使用されることになる。
献金が使用されることになる「最後の言語キャンペーン」は、99年ウィクリフ国際会議で採択された、聖書翻訳が必要とされるすべての言語民族のために、2025年までに翻訳チームが派遣されて働きが着手されることを目指す「ビジョン2025」に基づくもので、米フロリダ州オーランドにある米国本部で今月22日から公式に開始される運動。
匿名の献金者は12日に発表した文書で、「識字力は、人々が貧困から抜け出すために働くこと、あるいは他からの圧制に抵抗するのを助ける」「初めに母国語で読むことを学んだ子どもたちは、他国語で学んだ子どもたちよりも読み書きを早く身につけ、学校にも留まりやすい」と語っている。
現在世界には6912言語が存在しており、このうち聖書が訳されている言語は2454言語で、1900言語以上で聖書翻訳プロジェクトが進行している。しかし、聖書翻訳を必要としているがまだプロジェクトが始まっていない言語は、全体の3分の1以上に相当する2252言語に上り、約1億9300万人がそれに該当する。
「最後の言語キャンペーン」では、この残された言語民族のために、最先端の翻訳技術を用いて識字力向上と聖書翻訳のスピード化を図る。
米国ウィクリフ聖書翻訳協会のボブ・クレソン理事長は今回の献金に深い感謝を示し、「聖書翻訳事業と識字力向上事業へ捧げることは、この不確かな経済的状況の中で、誰もができる恐らく最も確かな投資であろう」と語った。
同協会に対するここ最近の高額な寄付としては昨年11月、ニューヨーク証券取引所のマーシャル・N・カーター会長が、1億円相当の自家用航空機を「最後の言語キャンペーン」の共同事業団体である「JAARS」に贈ったものがある。
ウィクリフ聖書協会は聖書翻訳事業のほか、浄水装置の設置やエイズ教育、人権及び地域社会活性化のための様々な事業も行なっている。