米中西部オハイオ州で16日、地方自治体の首長や公務員が、キリスト教会を含む特定地域の礼拝所の閉鎖を命じることなどを禁止する法律が成立した。同州知事の公式サイト(英語)で同日発表された。同州内には、現代技術を使わない昔ながらの生活様式を守るキリスト教の一派「アーミッシュ」の世界最大の共同体もあり、オンラインで礼拝をすることが不可能という事情もあるとみられる。米国では、カリフォルニア州など民主党が優勢な州では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、屋内での礼拝を禁止する州もあり、同州など共和党が優勢な州との間で対応が分かれている。
法案の起草者は、同州下院議員のスコット・オルスラガー、ブルット・ヒルヤーの両氏で、2人とも共和党所属。2人の選挙区周辺には世界最大のアーミッシュ共同体が広がっており、そのうちのホームズ郡では全人口4万2千人のうち3万6千人がアーミッシュと、人口の85パーセントを占めている。
アーミッシュは、保守的なキリスト教信仰のもとに、現代技術を極力排除した伝統的で自給自足の大家族中心の生活を約200年前から営んでいる。アーミッシュ研究家のドナルド・クレイビル氏によると、アーミッシュの1教区には25~35世帯約150人がおり、教区内の全員が社会的・宗教的生活に参加するという。建物としての教会は存在せず、礼拝は日曜日ごとに教区内の一つの家に集まってささげる。インターネットもスマートフォンも使用しないため、オンラインで礼拝することは不可能で、屋内礼拝を禁じれば、その社会的・宗教的生活の基盤を根底から破壊することにつながる。
米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)によると、オハイオ州のアーミッシュ共同体でも新型コロナウイルスの脅威は認識されている。同州第2の都市クリーブランドにある全米屈指の大規模病院「クリーブランド・クリニック」(医療従事者5万5千人)がマスク不足に陥った際には、アーミッシュの女性裁縫師たちもマスク生産を手伝い、同病院のほか複数の医療機関に供給したという。
法案に署名したオハイオ州のマイク・デウィン知事は6月、自身のツイッター(英語)で、自粛していた礼拝所の再開に関する指針に言及しつつも、「単なる提案であって、条件ではありません」と述べ、信教の自由を侵害しない姿勢を示していた。