旧新約聖書全巻の翻訳が完成した言語が、間もなく世界で700言語に達する。新約聖書のみの翻訳が完成した言語も、間もなく1550言語に迫る勢いだ。しかし世界には7千以上の言語があり、世界の5人に1人は、母語など自身が最も理解しやすい言語で聖書を読むことができない。そのため、現在も161カ国2617言語で聖書の翻訳作業が進められている。
英国ウィクリフ聖書翻訳協会の発表(英語)によると、2018年までに旧新約聖書全巻の翻訳が完成したのは683言語であったが、最新の年次報告(10月1日現在)では、15言語増えて698言語となった。また、新約聖書の翻訳が完成した言語は、昨年は1534言語であったが、現在は1548言語まで増えた。同様に、聖書の部分訳がある言語は、昨年は1133言語だったが、5言語増えて1138言語となった。
同協会によると、現在世界では2617言語で聖書の翻訳作業が行われており、このうち約4分の3を、同協会とパートナー関係にあり、少数言語の識字率向上を支援しているキリスト教団体「国際SIL」が担っているという。
同協会の統計学者であるピーター・ブラッシントン氏は、こうした実績が聖書翻訳事業の励みになると語る。
「これらの実績は励みになっています。翻訳チームが世界中で膨大な作業を行っていることを表しているからです。表面的には毎年の変化は必ずしも劇的に見えるとは限りませんが、聖書翻訳には献身的で長期的な努力が必要であり、現在完成している翻訳の多くは数年前に始まったものです。私は1996年にウィクリフの働きに参与しましたが、これまでの間に旧新約聖書全巻が翻訳された言語の数は2倍になりました」
同協会のジェームズ・プール事務局長は、この1年間の働きを振り返り次のように語った。
「自国語の新約聖書や(旧新約が完成した)聖書を手にした人々に、大きな変化が起こるのを見てきました。過去12カ月の間に、ケリコ語やワメイ語(コニャギ語)、ニャキュサ語に訳された新約聖書の奉献式で見た喜びや興奮は、自国語の聖書があることの意味の大きさを物語っています。十分な理解を持って神の言葉を読んだ人々は、より深く変えられます」
しかし、こうした進展があるにもにもかかわらず、世界のすべての言語で旧新約聖書の翻訳が完成するまでの道のりはまだ長い。同協会によると、世界で使われている言語の数は、手話を含めて7353語に上る。聖書の一部あるいは全部が翻訳されている言語は、合計すると3384言語に上るが、残りの3969言語ではまだ一節も翻訳されていない。これら聖書が未翻訳の言語を使う人々は、世界に約2億5200万人もいる。
「この統計が示すとおり、やるべきことは山積しています」とプール氏は言う。「15億近くの人々が、自身の一番よく分かる言語で書かれた聖書を持っていません。これは世界人口の5分の1です。だからこそウィクリフは、これらすべての言語に神の言葉を翻訳するため、日夜努力しているのです」