聖書は原本が残っているのか。
著者が書いたもの(そのもの)は原本といいますが、それは残っていません。原本から書き写した「写本」が多数残っています。旧約聖書は、そうした多数のヘブル語写本からさらに多数の写本が作られました。そのほか、古代の翻訳本も重要です。
主なものを挙げると、マソレテ写本、アレッポ写本、カイロ・カライ会堂預言者写本、ロイヒリン写本、オリエンタル444写本、カイロ・ゲニザ〔貯蔵庫写本〕、サマリア五書写本、ナブルスの巻物、死海写本(BC3世紀前後のもので、1948年“死海”北西の洞窟から発見された)。七十人訳ギリシャ語訳本、その他のギリシャ語訳本、ヘクサプラ〔六欄聖書〕、ペシッタ〔シリヤ語訳〕、タルグム〔アラム語訳〕、コプト語訳、ヴルガータ訳など。
新約聖書についても、原本は残っていません。そしてやはり、このギリシャ語の原本から書き写した「写本」と、その写本からさらに書き写した写本が多数発見されています。その主なものを挙げると、まず、パピルス写本が、初めは巻物で、後にはコーデックスという何枚かをつづった帳面の形で、エジプトなど乾燥季候地帯で発見されました。これには、オクシリンコス・パピルス、ジョン・ライランズ・パピルス、エゲルトン・パピルス、ボードマー・パピルス、チェスター・ビーティ・パピルスなど88が発見されています。
後に、パピルスよりもはるかに耐久性のある羊皮紙、獣皮紙の写本が作られました。字体による分類としては、楷書体の大文字写本が300弱、草書体の小文字写本が約3千残っています。
大文字写本としては、シナイ写本、バチカン写本、アレキサンドリア写本、エフライム写本、ベザ写本、クレルモン写本、コリディ写本などが残っています。
このような多数の写本・訳本などを学者たちが厳密に比較考量して《校定本文》を作成していますが、それは、気が遠くなるほどの緻密で根気のいる研究の結果なのです。その《本文》から、現代の各国語へと翻訳され、印刷されて、我々の手許に届いているわけです。
ですから、原本が残ってなくても、不確かというわけではなく、写本、訳本などが多数残っています。また、かぎりなく原本に近づいていく努力をし、また複線の検証も繰り返していますから、安心できるものだと思います。
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