「震災から9年目をむかえる宗教者復興会合」が13、14の両日、仙台国際センター(仙台市)で開催された。キリスト教を含む宗教者をはじめ、行政や学者、NPO、市民団体、地元住民など約130人が参加。2011年の東日本大震災発生後に取り組んできた活動を振り返るとともに、被災地における宗教者の役割について話し合った。
会合は、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会が、これまで行ってきた東日本大震災の復興支援活動を3月で一区切りすることから企画した。開会あいさつでは、同委を代表して庭野日鑛(にわの・にちこう)会長(立正佼成会会長)が登壇。「自然災害に遭った人は、100人いれば100通りの困難に出会っている」とし、「よりきめ細かな触れ合いが必要であり、そこに宗教者の役割がある」と強調した。
続いてあいさつした宗教者災害支援連絡会の島薗進代表(上智大学実践宗教学研究科教授)は、「宗教・宗教者・宗教団体と社会の関わりが日本社会の中で新しい局面を展開している」とし、宗教者による「どういう支援が好ましいのか、どういう工夫が可能なのか、今後も話し合っていきたい」と語った。
基調発題として講演した前復興相の吉野正芳衆院議員(自民党)は、被災地の復興について、ハード面は進んでいるがソフト面が進んでいないと説明。2年後には廃止される復興庁の後継組織を考え、調査を行ったところ、学校の教員とスクールカウンセラーの加配を継続してほしいという要望が強かったことなどを報告した。
その後、2日かけて4つのテーマでセッションが行われた。1つ目のセッション「失われたいのちへの追悼と鎮魂」では、日本基督教団石巻栄光教会(宮城県石巻市)の川上直哉牧師が、自身の震災に関わる活動に触れ、犠牲となった人々と向き合うときに大切なこととして「私たちが絶望しないこと」などと語った。3つ目のセッション「これからのいのちへの責任」では、浄土宗愚鈍院(仙台市)の中村瑞貴(ずいき)住職が、「平常時にできないことは災害時にもできない」と述べ、平常時から行政と連携し社会問題に向き合うことの必要性を説くなどした。
閉会あいさつに立ったWCRP日本委の植松誠理事長(日本聖公会首座主教)は、復興のためにはまだ課題が多くあることに戸惑いを感じたと印象を語った上で、「だからこそ協働する必要性がある」とし、宗教者としてこれからも被災者に寄り添い、共に歩んでいくことを誓った。
会合終了後には、津波の被害に遭った地に造られた防波堤「千年希望の丘」(宮城県岩沼市)で、「東日本大震災の追悼と鎮魂ならびに復興合同祈願式」を実施し、宗教者約120人が参加。キリスト教、イスラム教、神道、仏教など12教団による宗教宗派別の祈りがささげられ、地震発生時刻の午後2時46分には全員で黙祷をささげた。