ドナルド・トランプ米大統領は3日、信仰に関する新しい部署をホワイトハウスに設置する大統領令に署名した。ブッシュ政権とオバマ政権でも同様の部署が設置されており、それに倣う形。政権内において宗教団体の発言権を強化することで、信教の自由に対する行政の行き過ぎを監視する。
3日は毎年恒例の「国家祈祷日」で、トランプ氏は同日午前、ホワイトハウスのローズガーデンで、さまざまな宗教の代表者が立ち会う中、大統領令に署名した。新設されたのは「信仰・機会イニシアチブ」。ブッシュ政権時代は「信仰に基づくコミュニティー・イニシアチブ局」、オバマ政権時代は「信仰に基づく隣人パートナーシップ局」の名称だった。
大統領令(英語)には次のように記されている。
「この行政機関の狙いは、法的に認められた機会を最大限に生かすことにより、宗教団体が助成金や契約、諸々の活動や連邦基金の利用などにおいて公平に競い合えるようにすることである。宗教団体の取り組みは、地域社会を活性化させるために不可欠である。連邦政府は、革新的で目に見える成果が期待できる取り組みを通じ、宗教団体と協力することを歓迎する」
トランプ氏は、米国や他国における信教の自由を守ろうとする自政権の取り組みを自ら評価し、「(大統領令は)歴史的行為」だと強調。「この信仰に関するイニシアチブは、家庭や地域社会、またこの偉大な国における宗教の役割の重要性を認識する政策の策定に役立つ」と述べた。
また「この部署の役割は、宗教団体が平等に政府の基金に預かり、信条を実践する権利を平等に持つことを保証するものです。この措置を取る理由は、多くの問題や大きな課題を解決する上で、信仰の方が政府よりも力強いことをわれわれは知っているからです。神よりも力強い存在はありません」と続けた。
一方、この大統領令に対しては批判の声もある。「政教分離を求める米国人連合」(AUSCS)をはじめとする批判者らは、大統領令は宗教の名の下に差別を拡大するものだと主張している。
AUSCSのレイチェル・レーザー会長は同日、声明(英語)を発表し、次のように述べた。
「(大統領令は)トランプ氏の福音派諮問組織がたき付けた新たな試みであり、信教の自由の定義を、自分の宗教的信条と同じくしない人々を差別する自由と変えるものです。わが国は、信仰を持つか否かの自由、信仰を実践するか否かの自由が、万人にあり、他人を傷つけることがない状態にあるときに最も強くなるのです」
トランプ氏は昨年の国家祈祷日にも、信教の自由を推進する大統領令に署名したが、昨年は保守派からも複雑な声が上がった。
同性婚反対を訴える非営利団体「全米結婚機構」(NOM)は昨年、大統領令に関する見解(英語)を発表し「牧師や宗教的医療機関には有益な条項を含んでいるが、政治的迫害から信仰を持つ人々を守るためにオバマ政権が発動したものとは程遠い」と指摘。「トランプ大統領は(日頃)信教の自由について雄弁に語っており、今日もホワイトハウスの式典で雄弁に語りました。彼は心から信教の自由を信じているのかもしれないが、大多数の信仰者にとって大統領令は実際には特に意味があるものではありません」としていた。