日本カトリック司教協議会は20日、東京と福岡の2キャンパス制を採用していた「日本カトリック神学院」を、各キャンパスごとに独立した「諸教区立神学校」に移行すると発表した。2キャンパス制については利点があったものの、幾つかの問題点もあったため、キャンパス統合に向けた議論が行われてきた。しかし最終的な合意に至らず、2つの諸教区立神学校による体制へ移行することが決まった。2018年度の定例司教総会(19〜22日)で同日承認され、今後、ローマ教皇庁(バチカン)福音宣教省長官に最終的な認可を申請することになる。
司教協議会の発表によると、日本カトリック神学院は2009年4月、「東京カトリック神学院」と「福岡サン・スルピス大神学院」が合同して設立。両神学院所有のキャンパスをそのまま使用する形で、2キャンパス制を採用していた。
合同と2キャンパス制については、2つの神学院の神学生が神学生時代から交流できること、またそうすることで日本の教会全体のために福音宣教する仲間意識や視点を養成できること、日本の東西に司祭養成のための神学教育の拠点を置けること、などの利点があった。
しかし、遠距離間に2つのキャンパスがあることで「予想以上に問題が生じ」たという。具合的には、神学生が6年間のうち2回、それぞれのキャンパスを移動するため、養成者と神学生の関わりが希薄化すること、教員が遠方から来るため、集中講義が多くなり、教員と学生の負担が大きいこと、などを挙げている。
そのため、14年から2キャンパス制の見直しが始まり、キャンパス統合に向けた検討が行われてきた。約4年にわたる議論で、キャンパスは1カ所にするべきという意見が強くなり、具体的に東京か福岡のどちらかにするという話し合いまで進んだという。しかし、東京教会管区と大阪教会管区の司教団は、上智大学との提携を希望。一方、長崎教会管区の司教団は、福岡サン・スルピス大神学院の時代から運営に携わってきたスルピス会の養成方法にのっとって神学教育を行うことを希望したことなどから、キャンパス統合については最終的な合意に至らなかった。
そのため、昨年9月の臨時総会で長崎教会管区の4教区の司教が、4教区による諸教区立神学校設立の意志を表明。日本の全16教区に確認した上で、現在の東京キャンパスには、東京教会管区の6教区(札幌、仙台、新潟、さいたま、東京、横浜)と、大阪教会管区の5教区(名古屋、京都、大阪、広島、高松)による諸教区立神学校が、福岡キャンパスには、長崎教会管区の5教区(長崎、福岡、大分、鹿児島、那覇)による諸教区立神学校が設立されることが決まった。
教皇庁聖職者省は昨年12月、「司祭召命の賜物 司祭養成のための基本綱要」を発表し、各神学校はこの基本綱要を基準に作成された各国ごとの綱要によって運営されることが求められている。そのため、日本の司教団も、日本の教会に見合った綱要を作成し、2つの諸教区立神学校はそれに基づいて運営されることになる。