米国のキリスト教人口は減少しているとする見方が支配的だが、ハーバード大学などの最新の研究によると、キリスト教信仰自体は実際は強まっているという。
昨年末に発表された「米国の宗教における持続的かつ例外的強度:近年の研究への応答」(英語)と題する研究は、米国は他の先進国と同様、かつての活発な宗教的信仰を失ったとする「世俗主義論」を検証している。この研究に携わったインディアナ大学のランドン・シュナベールと、ハーバード大学のショーン・ボックの両氏によると、米国人クリスチャンの真剣さと信仰の実践度合は他の先進国に比べて高く、米国民の信仰自体は減退していないという。
米オンライン誌「ザ・フェデラリスト」(英語)は22日、同研究について伝え、プロテスタント主流派(米国の場合、社会派やリベラルを指す)の教会が急速に減退しているのは明らかだが、米国民が信仰を捨てているということはなく、多くはより福音的な教会に行くようになっていると指摘する。
「この変化のおかげで、主流派と流れを異にする教会が軒並み堅調を維持しています。この種のデータが収集されるようになって以来、その傾向は続いています。ある意味でそういった教会は成長しているのです。今回の研究で判明したのは、そういうことです」
過去50年間、毎日祈り、週に1回以上教会の集会に出席し、聖書の信頼性を信じ、生活の中で信仰を実践する米国人の割合は安定しており、今に至るまで明らかに存続している。米国では約3人に1人が毎日複数回祈っている一方、他の先進国の場合、平均して15人に1人だけであるという点に、信仰におけるコントラストが著しく表れている。
米国人の3人に1人は聖書を神の言葉だと信じる一方、他の先進国では平均して10分の1以下にとどまっている。週に1回以上礼拝に出席している人の割合で見ると、1位の米国は2位のスペインの2倍で、先進国の平均値の3倍となる。
また、他の世論調査団体も、近年の言説に反し米国のキリスト教が縮小していないとする見解を報告している。米ピュー研究所の2015年の発表では、超教派の福音派教会が大きく成長している。また、黒人のプロテスタント教会もほぼ安定しており、教勢に上昇傾向さえ見られる。
メディアの関心が強く寄せられているのは、特に1980年代から2000年前後に生まれた若者(ミレニアル世代)だ。この世代は極めて高い割合で教会離れが進んでいるといわれている。しかし、これについても慎重な分析が求められる。
同研究所によると、信仰から離れた若者のうち、幼少時代は強い信仰を持っていたと回答したのは11パーセントにとどまったのに対し、89パーセントは信仰や信仰の実践が弱い家庭の出身だと答えた。
シュナベール、ボック両氏の研究は、バイオラ大学のJ・ゴードン・メルトン教授(米国宗教史)が2015年に発表した見解とも一致している。メルトン氏は同年11月に首都ワシントンで行われたパネルディスカッション(英語)で、次のように述べている。
「一部の教会では過去65年の間、会員数が減少していますが、それと同時に何百もの新しい教団・教派が創設されています。またこの間、人口増加は2倍余りだった一方、教会の会員数は4倍以上に増えています。会員数の増加は依然として上向きです」
こうした宗教観に関する世論調査で注目される回答に「該当なし」がある。つまり、特定の宗教を持たない人たちである。メルトン氏によると、こうした人たちをすべて非宗教者と見なすのは間違いだという。
「それ(非宗教者)には当てはまりません。確かに、『該当なし』の中には無神論者や非宗教者が大勢含まれます。しかし、霊的ではあっても宗教のカテゴリーに分類されない人たちも大勢いるのです。『該当なし』の最大のグループは、キリスト教が宗教ではないと考えている人たちです」