武装組織に誘拐されていたインド人カトリック司祭のトーマス・ウズナリル神父(57)が、12日までに解放された。ウズナリル神父は昨年3月、中東のイエメンで誘拐されたが、隣国オマーンに飛行機で送られたことを、オマーン政府とカトリック教会が確認。13日にはバチカンを訪れ、ローマ教皇フランシスコとも面会した。
ウズナリル神父は昨年3月4日、武装した4人のテロリストが、イエメン南部の都市アデンにある老人ホームを襲撃した際に誘拐された。4人は当初、ホームの入居者の親戚を装って姿を現し、インド人修道女4人、イエメン人スタッフ2人、ホームに入居していた高齢者8人、警備員1人を殺害した。襲撃したテロリストたちは、過激派組織「イスラム国」(IS)との関係も伝えられていた。
今年5月には、助けを求めるウズナリル神父の映った動画がネット上に公開された。ウズナリル神父は動画で、「私の健康状態は急速に悪化しており、できるだけ早く入院する必要があります」と述べていた。
オマーン政府は、オマーンのカーブース・ビン・サイード国王とバチカンからの要請を受け、イエメン当局と協力しながら、ウズナリル神父の救出活動を展開。報道によると、オマーン外務省が、今回の解放に介入したとされている。
インドのスシュマ・スワラージ外相は12日、ツイッターでウズナリル神父の解放を確認したと発表した。スワラージ外相はここ数カ月間、ウズナリル神父を誘拐した武装組織をインド政府が把握していると述べていた。タイムズ・オブ・インディア紙(英語)によると、インド政府は身代金の支払いはなかったとしている。
アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、イエメンの3カ国のカトリック教会は、ポール・ヒンダー司教による声明を発表。ヒンダー司教は声明で、「ウズナリル神父は解放のために尽力してくれたすべての人、無事に解放されるように途切れることなく祈ってくれた世界中のすべての人に感謝しています。より詳しい情報は、今後可能な限り明らかにされるでしょう」と述べた。
オマーンの日刊紙「オマーン・オブザーバー」は、ウズナリル神父が兄弟姉妹やすべての親戚、友人ばかりでなく、神に感謝していると伝えた。
インドにあるシリア・マランカラ典礼カトリック教会の総大司教であるバーセリオス・クレーミス枢機卿は12日、カトリック系ニュースサイト「クラックス」(英語)に、「神は私たちの祈りに答えくださいました。私たちはインド政府に感謝しています。称賛に値する外相は、ウズナリル神父の解放を確かにすることに個人的な関心を示してくれました」と語った。
老人ホームを運営していたカトリックの女子修道会「神の愛の宣教者会」のシスター・メアリー・プレマ総長は、「その憐(あわ)れみの故に神に感謝します」とコメント。「すべての栄光を神に帰し、ウズナリル神父の解放のために祈り、たゆまず働き掛けてくださったすべての方々に感謝します」と語った。同修道会では、創立者であるマザー・テレサの墓の上にウズナリル神父の写真を置き、毎日解放のために祈っていたという。