チリの憲法裁判所は21日、人口妊娠中絶の全面禁止を緩和し、一定の条件下で中絶を認める決定を下した。今後は、強姦(ごうかん)により妊娠した場合や、母親の生命が危険にさらされる場合、もしくは胎児が胎内で生き延びることができないと考えられる場合の3つのケースに限り、中絶が認められることになる。
中絶の全面禁止を定める現行の法律は、1981年にアウグスト・ピノチェト軍事政権下で導入された。全面禁止を緩和する法案をめぐっては、チリ議会で2年以上にわたって議論が行われ、先月やっと上院を通過したところだった。しかし、反対派は最後に、法案が憲法の「胎児の生命を守る」という要求を満たしていないと主張し、憲法裁判所に合憲性の判断が委ねられていた。
憲法裁判所は、6対4で法案が憲法に違反しないとする決定を下し、来週にも最終的な決定文を発表する予定。
中絶の全面禁止を緩和しようとする試みは91年から続いているが、中絶に反対するカトリック教会や保守派が全面的な禁止を支持しているため、これまで長い間、実現してこなかった。チリ初の女性大統領であるミシェル・バチェレ大統領が長年にわたって掲げていた公約でもあり、世論調査では人口の約7割が法案支持の立場だが、中絶をめぐっては激しい議論が今も続いている。
女性の地位向上を目指す国連の新組織「UNウィメン」の初代事務局長を務めた経験のあるバチェレ氏はツイッターに、「チリ女性の歴史的な日」とコメント。「私たちは自分たちの尊厳の基本的権利を前進させるのです」と書き込んだ。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのアメリカ大陸担当ディレクターであるエリカ・ゲバラ・ロサス氏は、「チリはついに女性たちと少女たちの人権を守ることに1歩近づきました」と述べた。
しかし、チリのカトリック司教たちは、この法案が「市民の良心に背き、公共の利益を損なうものです」と述べ、否定的な見解を示している。チリ・カトリック司教協議会は声明で、「私たちは、まだ生まれていない人間が、国家によって(生きるという)この基本的、根本的な権利を保護されない新しい状況に直面しています」と述べた。