末日聖徒イエス・キリスト教会(LDS、通称・モルモン教)は8日、中央幹部の1人であるジェイムズ・J・ハムラ氏(59)を除名処分にしたと発表した。ハラム氏は、モルモン教の中央幹部組織である「七十人定員会」の1人で、このような高位指導者が除名されるのは異例。
LDSの公式サイト上にあるハラム氏の紹介ページ(英語)には、8日付で「今朝、ジェイムズ・J・ハムラ氏は、大管長会と十二使徒定員会の懲戒処分によって、LDS七十人定員会の職を解かれました」と記されている。七十人定員会は、LDSトップの大管長と2人の顧問からなる「大官長会」と、12人からなる終身制の「十二使徒定員会」に次ぐ幹部組織。ハラム氏は2008年から七十人定員会のメンバーだった。
LDSの教会規則(英語)によると、LDSの会員資格を剥奪する除名は、懲戒会議が命じる最も重い処分。「これは最後の手段であり、もっと軽い懲戒措置が不十分である時にのみ執行されます。LDS会員の資格を失った人は、引き続き教会の公的集会に出席することは許されますが、会員資格を停止された人と同じく、(LDSの活動への)参与は制限されます。加えて、LDSに十一献金をすることも許可されないでしょう。彼らはもはや会員ではありませんが、地域の指導者は引き続き助言や指導を提供することが許されています」と説明されている。一方、除名されても、罪を悔い改めたと見なされれば、復帰は可能。しかし、もう一度洗礼を受ける必要があるという。
LDSの本部があり、モルモン教徒が人口の半数以上を占めるユタ州の地元紙「デザレット・ニュース」(英語)によると、七十人定員会に所属する上位指導者が除名されるのは、背教などを理由に1989年に除名された故ジョージ・P・リー氏以来。一方、消息筋が同紙や別の地元紙「ソルトレーク・トリビューン」(英語)に対して語ったところによると、ハラム氏の除名は「背教や不信仰」が理由ではないという。米ワシントン・ポスト紙(英語)によると、LDSのハンドブックは、指導者が除名となる道徳的理由を挙げており、その中には不貞行為や強盗、横領、配偶者に対する虐待があり、また同性愛関係にあることも含まれているという。ハラム氏は既婚者で6人の子どもがいる。
モルモン研究が専門のパトリック・メイソン氏(米クレアモント大学院大学准教授)は、ディザレット・ニュース紙に対して、「これは非常に異例なことです。特に20世紀〜21世紀のモルモン教において、本当に重大な出来事です」とコメント。一方、「これはハラム氏と彼の家族、またLDSの指導者たちの間にとどめられるべき、私的な事柄なのかもしれません」とも推測している。
なお、ジョセフ・スミスが19世紀初頭に設立したLDSは、聖書の他に『モルモン書』などを独自の聖典として持ち、三位一体を否定するなど、正当なキリスト教ではない異端とされている。