新宿大久保通り教会防災ネットワーク第21回定例会が18日、大久保バプテスト教会(河野信一郎牧師)で行われた。新宿の大久保通りには多くの教会があり、そこから牧師や協力団体の代表9人が集まった。
それらの教会は地理的には近くにあるものの、教派の違いなどから、今まで協力し合う機会があまりなかった。それが東日本大震災をきっかけにして、クリスチャン災害援助団体クラッシュジャパンの栗原一芳(次期東京災害担当)氏の呼び掛けにより、2014年に新宿大久保通り教会防災ネットワーク(通称・SOS防災ネット)が結成され、防災に一緒に取り組むようになった。
大久保バプテスト教会(日本バプテスト連盟)、新宿福興教会(友愛グループ教会連合)、柏木教会(日本キリスト教会)、東京中央教会(日本ホーリネス教団)、東京中央教会(単立)、ルーテル東京教会(日本福音ルーテル教会)、淀橋教会(ウェスレアン・ホーリネス教団)。これら7つの教会が連携し、そこにクラッシュジャパン、いのちのことば社、ワールド・ビジョン・ジャパンが協力している。「各教会が助け合うだけでなく、震災や有事の際は地域の皆さんのSOSに適切に対応できるよう準備をしていたい」という思いも「SOS防災ネット」の名称には込められている。
定例会の冒頭、関東大震災の時に作られた「遠き国や」(聖歌397番)を菅野直基氏(新宿福興教会牧師)のギター演奏で賛美した後、まず、4月30日に淀橋教会を会場にして行われた「防災フェスタ2017」の報告と反省が話し合われた。
中村和司氏(淀橋教会副牧師)が「今年は昨年に比べ、参加人数が半分ほどだった。教会でも月末に向けて委員会も多く、教会員の参加も少なかったようだ」と問題提起すると、同ネットワーク代表の菅野氏も、「11曲の防災ソングを作って、ギター弾き語りと4カ国語で呼び込みをしたが、ちょうどゴールデンウイークと重なり、いつもはいる学生の姿が見えないし、通りを歩いている人も少なく感じた」と発言した。通行人をいかに呼び込めるか、そのタイミングについて活発に意見が交わされただけでなく、来年以降は、ゴールデンウイークの時期を外すなど開催時期についても話し合われた。
今年はCGNTVによる撮影が入ったので、特集する番組が作成された。放送を録画したものをスクリーンに映しながらイベントを振り返った。ワールド・ビジョン・ジャパン前事務局長の片山信彦(常務執行役員)氏は、「防災フェスタに参加して本当に感動した。なかなかない経験だった」と感想を述べた。
教会防災ネットワークは、地域との関わり、特に行政と連携して「防災」に対する意識を高めていく取り組みだが、そのためには、主催する教会が地域でどのような働きをしているか知ってもらう必要がある。そこで、「新宿大久保通り教会防災ネットワークとは?」と題するパンフレットを作成し、「防災フェスタ」で配付した。そこには、参加する7教会の教会案内と防災対応が具体的に紹介されている。それについて栗原氏は、「パンフレットを配ることができて本当に良かった。教会が地域とつながりが持てることは素晴らしい。他のネットワークにとっても良い刺激となり、モデルになると思う」と語った。
「防災フェスタ」での課題の1つとして、「通行人を対象にしているのか、地域の方か、または教会(クリスチャン)内への働き掛けなのかを知りたい」という質問があった。菅野氏は「それらのすべてが対象だ」と答えた。他の複数の参加者からは、「『防災フェスタ』では、遠巻きに見ている外国人も多くいたので、看板を外国語で標記するなど、外国人への呼び掛けに力を入れたらよいのではないか」などの意見も出た。また、菅野氏はPTA役員や消防団、育成会、町会などの地域活動をしてきた経験から、「あせらず、地域と長い目で関わりを続けていくことが肝心」と、今後は特に町内会との関係を作っていくことの大切さを訴えた。
柏木教会主任牧師である冨永憲司氏は、「地域に対する教会の責任として、この定例会には、牧師や役員(長老)だけではなく、教会員にも自由に参加してほしい」と述べた。
前回の定例会の後に栗原氏が、SOSで「防災カフェ」を始めることはできないかと提案したことから、急きょ、「防災フェスタ」の空きスペースで「防災カフェ」を行ったが、もっと継続的に行っていくことについても話し合われた。「メディカル・がんカフェ」(病気に対する共通理解を持ち、交流する教会でのカフェ)が全国的に広がりを見せている中、毎回お茶を飲みながら防災に関する講演を聴き、また気軽に各教会の信徒が集まって防災について話ができる、そんな場があればという。栗原氏が「防災は町の課題」と言うように、大切なのは、牧師だけでなく信徒が地域と結び付くことだ。防災は、誰もが関心を抱くテーマなのだから。
さっそく、「防災カフェ」は、日曜日の空いている時間を利用して、無理のないペースで、SOSに参加する教会が持ち回りで場所を提供するという方向で話が進められた。そしてまず7月30日(日)午後1時半、柏木教会で初の「防災カフェ」が「互いに話し合う」ことをテーマに開かれることが決定した。
甚大な被害をもたらした東日本大震災を通して、多くのキリスト教災害支援活動が生まれた。そしてこの新宿大久保通り教会防災ネットワークは、近いうちに東京でも起こると言われている震災に備えて、牧師たちを中心に始められた。教会がいかに地域に関わり、希望の光となれるのか。また、具体的に何を備えていけばよいのか。教会間のつながりを深めながら、SOSの働きは進んでいく。これに教会員も積極的に参加して、防災への意識を共有してみてはどうだろうか。
■ Shinjuku Ohkubo Street 教会防災ネットワーク(S.O.S)
■ 新宿大久保通り教会防災ネットワーク