東日本大震災からの復興に思いを寄せて、劇団「Project R(プロジェクトアール)」によるチャリティー公演「レ・ミゼラブル」が11日、成美教育文化会館(東京都東久留米市)で行われた。成美グリーンホールの収容人数は304人だが、昼夜の2回公演は満席となり、立ち見客がホールに入りきれないほどの大盛況だった。
「レ・ミゼラブル」は、19世紀初頭のフランスの動乱期を舞台に、さまざまな人間模様を描く感動の物語。ヴィクトル・ユーゴーはこの作品で「愛」「自由」「赦し」を強く表現している。
このミュージカルに挑戦したのは、2015年に設立されたばかりの劇団、Project R。その代表を務める菅野よりさんは基督聖協団清瀬グレースチャペルに通うクリスチャンだ。大学卒業後、劇団に所属して数々の舞台運営に携わり、今は中学校の音楽科教員として働いている。この作品でも演出から構成まで担当した。
50人を超えるバラエティーに富んだキャストも魅力だ。菅野さんの人脈と熱意で集めたメンバーは、事務所に所属する役者も、全くの未経験者もおり、10歳に満たない子どもから60歳を超えるベテランまで、心を1つにして舞台に立った。
主人公のジャン・バルジャン(夜の部)を演じる平岡基さんはオペラ歌手。「原作を読んで、キリスト教の赦し、祝福が根底にあると感じました。東日本大震災で苦しまれた方々への救いが『祝福』という形で表せたらと思います」
また昼の部で同役を演じる横山弘泰さんもオペラ歌手だ。「ジャン・バルジャンは聖人だと言われますが、僕は原作を読み込んで、彼の人間的な弱さからアプローチしてみました。司教からもらった愛によって、人の弱さを乗り越えることができると感じました」
コゼット役(昼の部)の小野里桃子さんは劇団ひまわりに所属している。エポニーヌ役を演じた香林佑美(こうりん)さんは、小学生の時に帝国劇場でリトルコゼットを演じた。テナルディエ夫人を演じた黒沢恵梨さんはミュージカル女優だ。
ジャベール警部役を演じたのは、バリトン歌手の金努(こん・つとむ)さん。小学3年生の息子、光希(みつき)君がガブローシュ役で、夢だった共演を果たした。クリスチャンの本村満喜さんはアンジョルラス役を演じたが、夢はミュージカル俳優だという。
3時間近い公演のラストシーンに観客は感動し、涙した。中には「舞台を観て、こんなに泣いたのは初めて」という声も聞かれた。終演後も感動冷めやらぬ観客はSNS等で思いを共有し、その余韻に浸った人も多くいた。
本公演のチャリティー総額は63万円を超え、この中から被災地に義援金が届けられる。菅野さんは言う。
「1人のクリスチャンとして、ユーゴーの強い信仰に思いを重ねて、『誰かを愛することは、神様のおそばにいることだ』と心から歌いました」