日本国際飢餓対策機構(JIFH)はキリストの精神に基づいて活動する非営利の民間国際協力団体(NGO)。大阪事務所で2010年より広報と緊急災害対応を務める吉田知基(ともき)さんに、JIFHの働きについて聞いた。
どのような活動を?
JIFHは飢餓問題に取り組んでいます。そのために「こころとからだ」の両面からのアプローチが大切だと考えています。現在世界には8億人の人々が「からだの飢餓」に苦しんでいます。その一方で、日本を含め先進工業国といわれる豊かな国々には「こころの飢餓」、すなわち弱者への無関心や自分たちだけが満たされればそれでよいという考えがあります。いま日本は食料輸入大国であると同時に、食べられる食料を捨てる食料廃棄大国でもあるのです。こうした無駄や自分本位の価値観(こころの飢餓)を改めていくならば、飢餓問題は解決に大きく近づきます。そのために「こころとからだ」の両面から飢餓問題に取り組む活動を続けています。
私たちは教育支援、自立開発支援、緊急支援などを現地で行いながら、特に人づくりに力を入れています。人々が、神様が造ってくださった尊い存在であることを知り、変えられていくことを期待します。人が持っている潜在能力を引き出すことで、人々や地域に備えられている賜物を生かしていきます。
貧困地域の人々は、「私たちは生まれながらに貧しい、だから支援に頼るしかない、自分たちではどうしようもない」という運命論に陥っていることがあります。しかしそうではなく、人々が自分たちで変えていくことができるよう、まず地域に入り、寄り添い、関係づくりをしていきます。現地のリーダーとも関わり、セミナー(善隣共生セミナー:聖書の理念に基づく教え)などを通じてトレーニングをし、住民が中心となって、自分たちで小さなプロジェクトを始めていけるよう支援していくのです。
長期的で持続可能な支援、自分たちの力でやれるようにするためには、人がカギとなります。そして、成功例を積み上げていくのです。そのような中で私たちも彼らからたくさんのことを学んでいます。
活動する上で難しいことはありますか。
海外から支援が入るということは、現地にとって大きなインパクトがあります。「海外から何をしに来てくれたのだろう。何をもらえるのだろう」と期待されるのです。そのため、突然、大きな建物や学校を建設するなどの大規模なプロジェクトをしてしまうと、依存心を生み出してしまい、自立するのが難しくなってしまいます。
JIFHは海外にスタッフを派遣して、地域の人々と時間をかけて関わり、自立に向けた取り組みを小さなところから進めていきます。
現地にはどのようなスタッフを派遣されているのですか。
フィリピン、ボリビア、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)に4人のスタッフを派遣しています。そして、20カ国、60のパートナー団体(同じビジョンを掲げる)と協力しながら働きを続けています。
コンゴに駐在しているアフリカ担当スタッフのジェローム・カセバはコンゴ出身ですが、国際基督教大学で学び、日本国籍を取得した日本人です。日本語、フランス語と英語、スワヒリ語、そしてもちろん現地の言葉も話せます。
彼の担当する地域は、いまだに内戦、紛争が続いています。すぐ近くで銃撃戦が起きるなど、国は混乱しています。
民間の国際協力団体(NGO)は紛争地域で活動することができません。開発支援を行っても、戦争はこれまで築いてきたものを破壊していきます。開発支援を進める上で「平和」は絶対条件です。しかし、ニーズはそこにあるのです。私たちは、紛争に巻き込まれて逃れてきた避難民の方々への支援も行っています。
問題から抜け出すためには?
そうですね。まずは外面ではなく内面(こころの飢餓)が変わらなくてはなりません。そのため「教育支援」は重要です。現地では親の教育への意識が低いため、子どもは労働力として扱われます。学校にも行かせたがりません。ですから、親へアプローチし、親が学びに参加して、自信を持って子育てができるように支えています。
日本の子どもたちへメッセージを。
小学校などでの講演会に呼ばれたときに子どもたちに話すのは、まず感謝して食べ物をいただくことです。次に、世界の現状を知って、関心を持ってもらえるようにしています。現状を知り、日々のものに感謝することが大切です。
日本は世界の中で最も食べ物を無駄にしている国の1つとして挙げられています。年間1800万から1900万トンの食料を破棄していると言われ、金額に換算すると8兆円~11兆円の無駄になるそうです。しかも、捨てられる食料のほとんどは家庭から出ています。
日本の子どもたちには、自分の生き方を見つめ、自分さえよければという考えではなく、他の国のことを覚え、人としての生き方や習慣を見つめ直すことをチャレンジしています。世界の現状に関心を持ち続け、できることから始めてほしいです。お小遣いの中から募金をする、そのような呼び掛けを続けています。やはり、意識を持つことですね。
日本人の海外への意識は?
日本人は近年、内向きになってきていると思います。これだけグローバル社会と言われる中で、情報は固定化され、自分に関心があることだけを知ろうとする風潮を感じます。紛争やテロが怖いというイメージが先行し、海外に出たがらなくなっています。JIFHは夏にワークキャンプを企画しますが、以前より人が集まりにくくなっています。私たちは同じ人間であり、同じ悲しみ、喜びを共有できるという世界の価値観を培う機会になるからこそ、若い人にもぜひ参加してほしいと思います。
私も大学時代にボランティアでフィリピンへ行き、ゴミの山を見て衝撃を受けました。それがきっかけで、大学3年生の時、休学をして現地へ出向きました。
人は1人では生きていけません。助け合って、いろんなことにチャレンジしてほしいと思います。
日本国際飢餓対策機構
072・920・2225(大阪)
03・3518・0781(東京)
052・265・7101(愛知)
098・943・9215(沖縄)
JIFHではサポーターを募集している。詳しくはホームページを参照とのこと。また、SNSや機関紙、リーフレット、メディアでも活動を伝えている。
チャイルドサポーター
JIFHではCFCT(Child Focused Community Transformation:子どもに焦点を当てた地域変革支援)と呼ばれる教育支援に取り組んでいる。子どもが学校へ行けるようになり、その家族、ひいては地域全体が自立に向かって変わっていく。現在、1627人が支援を受けているが、まだ563人の子どもが支援を待っている。自分が支援(チャイルドサポーター)する子どもの様子が分かり、手紙を通じて親交が深まる素晴らしい取り組みに、ぜひ1人でも多くの人に参加してほしい。詳しくは、チャイルドサポーター専用サイトを。