マーティン・スコセッシ監督の「沈黙-サイレンス-」が公開され、間もなく1カ月がたとうとしている。米国では内容的な評価の高さとは裏腹に、興行的には残念な結果(大コケ)となってしまった。一方日本では、この手の宗教映画としてはなかなか健闘をしていると、各方面から賛辞が届けられている。
実際に映画を見た人々(クリスチャン、ノンクリスチャン問わず)も、満足度が高いらしく、ヤフー映画レビューの評価は5点満点中4・06と、4点台をキープしている。公開から3週間がたっても高得点を維持しているのは、真に質の高い映画だということだろう。この作品をテーマに講演会やディスカッションが各地で行われている(関連記事:在日外国人や若者が見た「沈黙」 「沈黙―サイレンス」映画deディスカッション)。
そんな中、この映画だけでなく、原作の遠藤周作も含めた物語としての「沈黙」をさまざまな角度から解説し、理解を深めようという企画が、関西圏を中心に行われる。発起人は青木保憲牧師(大阪城東福音教会)。2月から4月にかけて、さまざまな教団教派で講演会を計画している。
青木保憲牧師からのメッセージ
まず、映画をご覧になったら分かることですが、劇中のキリシタンたち、そして司祭(パードレ)たちの信仰に対する情熱、純粋さは、見る者の感動を呼び起こすと思います。これがどこから来ているのかについては、キリスト者ではない多くの日本人には分からないでしょうが、彼らが命懸けで自分の信じているものを守ろうと懸命になっているさまは伝わると思います。この講演会でまずお伝えしたいのは、こういった信仰者が生み出された歴史的背景です。まずカトリック側の事情、そしてこれを受け止めた日本側の事情です。
続いて、遠藤周作の思いを詳(つまび)らかにしてみたいと思います。どうしてこの作品を書いたのか。そこで訴えたかったこと、考えてもらいたかったこと、そして遠藤自身が逡巡(しゅんじゅん)していることなど、『沈黙』という作品の生みの親の声を届けたいと思います。
さらに、この遠藤作品をマーティン・スコセッシ監督がどう描いたか、です。これに関しては、1971年に篠田正浩監督が映画化した「沈黙」との対比で解説していくつもりです。篠田版では、遠藤周作自身が篠田との共同脚本ということで映画に関わっています。
しかし、映画のパンフレットで遠藤は「ラストシーンを変更してほしい、と篠田さんにお願いしたが、受け入れられなかった」と語っています。つまり、篠田版は、遠藤が願ったものとは異なる視点で描かれていることになります。
そのあたり、スコセッシ版は果たして遠藤の願いを伝えるに足るものとなっているのか。このところから、遠藤が真に訴えたかったことを推察してみたいと思います。
最後に、この映画がキリスト教的にどんな意味を持つのか、神学的にどんなメッセージを読み取ることができるのか、また福音宣教の有効なツール足り得るのかについても、自分の拙い経験や考察からですが、大胆に聴衆に提示してみたいと思います。
すでにこういった会を開催しようとする時点で、福音宣教に有効であると確信しているわけですが(笑)、初めて来られた方にも分かりやすく、そしてキリスト教とはこういう考え方をするのか、ということを丁寧にお伝えしたいです。
やはり一方通行で講演を終えることでは面白くありません。1時間程度の公演の後、できたら同じくらいの時間をかけて、皆さんとディスカッションできたらいいな、と思っています。
こちらから「教えてやるぞ」というやり方は好みませんし、そもそも私は原作者でもなければ、映画を作った監督でもありませんから、絶対正しい答えなんて見いだせるはずはありません。むしろ求めるのは、「沈黙」という滋味豊かな作品を通して、おのおのが刺激を受けることです。その後の生き方、信仰者の歩みにとってプラスとなるものを見いだすことです。
ぜひ、お近くであればその会場にお出掛けください。また、自分のところでも開催してほしいというオファーも大歓迎です。ぜひお気軽にご連絡ください。
現時点で確定しているのは、以下の会場。詳細は、各会場にお問い合わせください。
① 2月26日(日)午後1:30~
会場:大阪城東福音教会 入場無料(席上献金あり)
〒536-0016 大阪市城東区蒲生1‐3‐12
問い合わせ:090・1140・2648(青木)
② 3月26日(日)午後3:00~
会場:日本基督教団室町教会 入場無料(席上献金あり)
〒602-8024 京都市上京区室町通丸太町上る大門町270
問い合わせ:090・1140・2648(青木)
③ 4月23日(日)午後2:00~
会場:日本アドベント・キリスト教団萱島キリスト教会 入場無料
〒572-0827大阪府寝屋川市萱島本町13-34
問い合わせ:072・821・0545(堅山)
*講演会は「Joyful Sunday」という名称で行われます。
講演会の開催に関する問い合わせは、青木保憲牧師(メール:[email protected])まで。