米国の進歩的な信仰団体が、ドナルド・トランプ米次期大統領に「道徳的アジェンダ」を推進することを望んで会談を求める公開書簡(英語)を発表し、信仰指導者を自認する2400人以上が署名した。また、1万人近い「道徳活動家」も署名し、賛同の意を示したという。
この書簡は、さまざまな宗教者が関わる信仰団体「リペアーズ・オブ・ブリーチ」が作成したもので、トランプ氏が大統領に就任する前に会談を求めている。
書簡には、「あなたの選挙以来、私たちのコミュニティーは嫌がらせと脅迫によってバラバラにされています。有色人種と宗教的少数派は恐れています。あなたが自分の選挙運動で訴えた貧しい労働者階級は、あなたがウォール街のエリートたちを自分の政権で用いるために任命し、労働者たちの組合の指導者たちを攻撃したことで失望しています」と記されている。
また、「どんな人間も完璧ではないことを知っていますが、私たちはこれらの道徳的諸課題について、あなたと語ることを願っています。あなたが公職にある間に、最悪の悪魔に屈服することはあまりにも危ないことだからです」としている。
リペアーズ・オブ・ブリーチの代表であるグリーンリーフ・キリスト教会(ノースカロライナ州)の牧師、ウィリアム・J・バーバー2世はこの書簡について、「いわゆる白人福音派と、自身をトランプ氏の精神的支援者としている他の者たちの神学的誤り」への応答だとしている。
バーバー氏は、「私たちは、自分たちの信仰的伝統と憲法権限の最も大切にされてきた価値基準から、全ての人々の経済的自由のために取り組むよう、また、あらゆる子どもたちが質の高い教育を受け、全ての人が医療保険を利用し、刑事司法が改正され、そして特に傷つきやすい人々が、法と倫理的問題において公平な保護を得ることができるように強く主張します」と語った。
書簡の署名者には、「ヒーリング・オブ・ネイションズ・ミニストリーズ」代表のジェームズ・フォーブス牧師、キリスト合同教会(UCC)「正義と証しミニストリーズ」代表代理のトレーシー・ブラックモン牧師、オーバーン神学校のキャサリーン・ヘンダーソン校長、ニューヨーク・アルバニア・イスラム教文化センターのイマム、タヒル・クキキ師、進歩的福音派団体「ソジョーナーズ」の教会関係主任、リサ・シャロン・ハーパー氏らがいる。
ハーパー氏はクリスチャンポストの取材に応じ、書簡には個人として、またソジョーナーズの代表としての両方の立場で署名したことを説明した。
ハーパー氏は、「正しい統治に関して信仰が教える諸原理に基づいたさまざまな物の見方を学ぶために、トランプ氏が今まで聞いてこなかったさまざまな信仰の声に耳を傾け、関わりを持つ」必要があると信じると述べた。
「トランプ氏は、大統領選挙運動中、実に最初の演説から最後の演説まで、有色人種、移民、イスラム教徒について、まるで彼らが法の下で十分な尊厳と保護に値しない、十分な意味で人間ではないかのように語りました」とハーパー氏。「私たちが行うことを決意しているのは、私たち全てが神の形に造られており、その結果、法の下での十分な保護に値するということを、国民とトランプ氏に思い起こさせる信仰の証しを、声を大にして言うことです」と語った。
ハーパー氏はまた、ソジョーナーズの主な関心は、司法長官に指名されたジェフ・セッションズ氏を含むトランプ氏が閣僚に選んだ人々にあると述べた。ハーパー氏は、セッションズ氏について、「司法省と権利を保護する法の働きを繰り返し傷つけてきた」と指摘した。
「例えば、(選挙での人種差別を禁じる)投票権法です。2013年、最高裁が投票権法を台無しにしたとき(最高裁は同年、制定から半世紀がたち状況が変わったとして同法に対して違憲判決を下した)、セッションズ氏は、同法が継続される必要があるとは思わないと公言しました。セッションズ氏は実際、同法が元通りにされるべきとは考えませんでした」
リペアーズ・オブ・ブリーチが発表した書簡は、信仰団体がトランプ氏に送った唯一のメッセージではない。昨年12月下旬には、米国聖公会カリフォルニア教区の主教らがトランプ氏に宛てた公開書簡(英語)を発表し、トランプ氏が閣僚に選んだ人々、特に地球温暖化に懐疑的なスコット・プルイット氏の環境保護局長官への指名に関する懸念を明らかにした。
主教らは書簡で、「私たちは、米国聖公会マサチューセッツ教区の主教らと共に、あなたの環境保護局長官の指名を問題として取り上げ、異議を申し立てます」と抗議。「著名な科学者たちの大多数は、人間が引き起こす気候変動の現実を認識するばかりではありません・・・私たちは、あなたとあなたの政権が悪い未来にならないように、世界の全ての子どもたちとこの星の全ての生命のために、一生懸命働くことを必要としています」などと述べている。