映画「ベン・ハー」リメイク版(パラマウント・ピクチャーズ、MGM共同製作)で主人公のユダ・ベン・ハーを演じたジャック・ヒューストンは、この作品を観るたびに、何がしか重要なものを得るという。
ヒューストンは最近行われた試写会で、赦(ゆる)しが試されるラストシーンについて、「あのシーンはとても感動的でした。演技にとても力があり、十字架刑と赦しのシーンでは、誰もがカルバリの丘の上にいるかのように感動しました」と、クリスチャンポストに語った。
「赦すということは、何もかも自分がやらなければならないと思うことではなく、ありのままの状況を受け入れることです」「誰かを赦すということは、ある意味では自分が主導権を握ることを意味しますが、重要なのは自己主張することではなく、相手を理解することだと思います」と、ヒューストンは続けた。
「ベン・ハー」は、ユダヤ人の王子ユダ・ベン・ハー(ヒューストン)が、ローマの軍人である義兄弟メッサーラ(トビー・ケベル)から反逆罪の濡れ衣を着せられる物語だ。ベン・ハーは自分の地位を剥奪され、家族や恋人のエスター(ナザニン・ボニアディ)から引き離され、国外追放されて奴隷の身となる。
しかし数年にわたる船旅の中、突如難破したベン・ハーは、後に人生の助言者となるイルデリム(モーガン・フリーマン)と出会う。イルデリムは、メッサーラを直接殺すのではなく、戦車レースで復讐(ふくしゅう)するようベン・ハーに勧める。その後イルデリムは、命懸けの戦車レースに向けてベン・ハーを指導する。しかし映画の根幹に流れている主題は赦しだ。ベン・ハーは旅の中でイエス・キリストと出会い、キリストが示した模範によって心が変えられる。
33歳の俳優、ヒューストンは、赦しというのは不思議なもので、人は奇跡や超自然現象に興味を持つかもしれないが、過ちを赦すという行為はなかなか理解できないと語る。
「報復や復讐というのは、とても恐ろしいことです。赦しには平和的な側面がありますが、復讐は憎悪や争いによって生じるものです。報復を繰り返したり、復讐したりすることを求め続けるなら限りがありません。そのことを教えてくれる成熟した人が必要だと思います」
「ベン・ハー」はこれまで、戦車レースで有名な物語だと言われてきた。戦車レースの撮影では、何人かのスタントマンが命を落としたとされている。1925年の原作映画でも、59年版でも騎手たちが死亡している。しかし今回のリメイク版は幸いなことに、けが人は1人も出なかった。しかしヒューストンは、アクションシーンが多いこの映画の撮影中、危険な場面に何度も遭遇したことを認めた。
「この映画を撮り終えるのは大変でした。戦車レースで生き残ることが困難だった、という意味です。そのシーンの演技はきつかったです。何度もいろいろな疑問を持ちました。こんなことができるのかと。ですから忍耐が必要でした。大変さの連続で、周囲の人からの素晴らしい助けもありました。ベン・ハーの旅(のシーン)もその1つです。だからこそ感動するのです」とヒューストンは語る。
「ベン・ハー」は、歯に衣着せぬハリウッドのクリスチャン夫婦映画家であるマーク・バーネットとローマ・ダウニーが製作総指揮した。キリスト教色は強く打ち出していないものの、キリストの福音でつづられた現代映画である。イエスは、ベン・ハーの旅の中にも何度か登場している。
テレビドラマ「ボードウォーク・エンパイア~欲望の街」の主演を務めたヒューストンは、ベン・ハーを演じることで人生を顧みることになったと語っており、「ベン・ハー」は現代を生きる全ての人が見るべき映画だと語る。
「この役柄の中には、幾つかの重要なメッセージがありました。現代人なら誰もが向き合うべきものです。この役を演じることによる最大の収穫は、世の中についていろいろと考えさせられたことです。特定の状況に置かれたとき、自分ならどうするかということです」と、ヒューストンは結んだ。
映画「ベン・ハー」は、米国では19日から、通常の2Dと3D、またデジタル3Dで放映される。詳細は公式サイト(英語)まで。