九州キリスト災害支援センターの地域支援の働きの1つで、特に子どもたちの支援を目的としたミッションに取り組んでいる「くまもとスマイル実行委員会」が、熊本地震で被災した親子に日常から離れて思いっきり楽しんでもらうことを目的に、「世界一楽しい サイエンス・フェスタ」(7月30、31日)と「親子でびっくり!上天草バスツアー」(8月3日)の夏の2大イベントを企画・開催した。サイエンス・フェスタには2日間で合計250人以上の親子が集まり、バスツアーには韓国からの小学生も参加、完全シークレットでスペシャルゲストのさかなクンが登場するなど、いずれのイベントも大きな盛り上がりを見せた。
サイエンス・フェスタは、クラッシュジャパンと「科学の楽しさを全ての人に」伝えるためのさまざまな取り組みを行う創造集団「ガリレオ工房」(ドラマ「ガリレオ」シリーズ監修)との共催で、東部YMCA(熊本県熊本市)と大津キリスト教会(熊本県大津町)を会場に2日間にわたって行われた。熊本の子どもたちはガリレオ工房などが参加する「青少年のための科学の祭典」を毎年楽しみにしているが、会場のグランメッセ熊本(熊本県益城町)が熊本地震で被害を受けて建物が使用できず、長期の休館を余儀なくされており、本イベントに寄せられる期待は大いに高かった。
初日には、オープンの時刻と同時に次々と子どもたちが入場し、会場の実験ブースに勇んで向かって行った。各実験ブースを回ってスタンプを集め、屋台のお菓子と交換するというスタンプラリー形式が取られており、中には「すぐにお菓子が欲しい」と言い出す子どももいたようだが、いったんブースでの実験が始まると、徐々に「自分で工作する」ことの楽しさに気付き始め、身近な科学の面白さに目を輝かせていた。実験ショーを行ったガリレオ工房の原口智・るみ夫妻は、大変親しみやすい人柄で子どもたちの心をつかみ、参加者全員が一緒になって実験に参加するにぎやかな時間を作り出した。
スタンプラリーを終えた子どもたちは、夏祭りのように並ぶ屋台で、かき氷、綿菓子、キャラメルポップコーンを楽しみ、水俣市から遠征でやって来た「センドラブ」提供のポテトをおいしそうにほおばっていた。子どもたちだけでなく、保護者も積極的に実験に顔をのぞかせる姿が見られ、科学の楽しさ、勉強の楽しさを発見する学習支援的な内容に対する感謝の声が多く聞かれた。
2日目は日曜日ということで、礼拝後の午後の時間に行われ、初日に比べると短い時間ではあったものの、実験ブースでの工作・体験に焦点が当てられたことで、その分一人一人がじっくりと納得のいくまで真剣に工作する時間を持つことができた。屋台のお菓子も非常に好評だった。
バスツアーは、熊本県上天草市の小学生と交流し、互いに励まし合うことを目的に企画。ワールド・ビジョン・ジャパン、東北ヘルプなど被災地支援に携わるキリスト教系団体の協力をはじめ、ボランティア団体の情報共有会議「益城町がんばるもん会議」や上天草市立上小学校、さらには熊本県と姉妹提携を結んでいる韓国の忠清南道の熊本事務所など、数多くの団体・企業の後援を受けて開催に至り、スタッフを含めると400人以上が参加した大規模なイベントとなった。
非常な好天に恵まれた当日、益城町・大津町・南阿蘇村・熊本市内の親子が上天草市にある「わくわく海中水族館シードーナツ」に大集合した。距離の離れた4つの場所に集合し、それぞれバスに乗り込むと、行きの道中では、香川県丸亀市の子どもたちが手作りで作成してくれた「応援メッセージ入りのウチワ」が配られたほか、丸亀市の少年バレーボールチームや剣道部の子どもたちのエールを収録したビデオレターが流され、心温まる時間となった。
全体的な遅れはあったものの、ほぼ全てのチームが同時刻に会場に到着。予定していた参加者が全員そろって、開会式に臨むことができた。地元熊本朝日放送の夕方の情報番組「くまパワ」の密着取材が入り、プロのリポーターが司会を引き受けたことで、力強く明るい司会で式は進行し、上天草市長が歓迎のあいさつを述べるなど、市を挙げての歓迎ムードに包まれた。ゆるキャラの「上天草 四郎くん」のダンスに子どもたちは大喜びで、上天草市立上小学校の生徒による元気の良い「ソーラン節」は、集まった人々全員に励ましを与えた。
そしてついに、スペシャルゲストのさかなクンが登場すると、会場の雰囲気は最高潮に。さかなクンは、このイベントのために深夜1時に起きて、地元の漁師と漁に出て捕まえた魚を子どもたちに披露しながら、魚の面白さを語った。子どもたちは、熱心にさかなクンの話に耳を傾け、魚の魅力にぐいぐいと引き込まれていった。
今回の企画は、震災の打撃を受けたシードーナツの支援の一助として、上天草市の観光アピールにつながればというもう1つの目的も持っていたが、さかなクンやシードーナツスタッフの協力によって、水族館の魅力が大いに子どもたちに伝わるツアーとなった。
子どもたちは、たくさんの思い出とともに、文房具や上天草のノベルティーグッズ、ぬいぐるみなど、後援団体・企業から提供された数多くのプレゼントを手に、大きな喜びのうちに帰路についた。帰りのバスで取られたアンケートには感謝の言葉が溢れ、またこのようなイベントを計画してほしいとの要望が多く寄せられた。
くまもとスマイル実行委員会によると、震災後は多くの家庭で、親たちが職場や実家・知人の家庭の倒壊の回復のために奔走し、子どもたちにかまってあげる、遊びに連れていく余裕を持つことのできない状況が続いていたという。今回の2つのイベントを振り返り、同委員会のスタッフは「久しぶりに日常を離れ、心から楽しむことができた親子が多かったように思う。子どもたちのスマイルは、親たちにとっても最高のプレゼント。これらのイベントが、被災地の人々が少しでも前に進んでいける力になってくれることを期待している」と話した。
また、非常に大きなイベントであったにもかかわらず、大成功のうちに終了したことについて、「サイエンス・フェスタでは、ボランティアとして参加してくれた九州ルーテル学院高等学校(熊本県熊本市)の生徒たちが、大変よく手伝ってくれた。バスツアーでは、プログラム・タイムスケジュール・参加者の状況など全て細かくチェックすることができたのは、スタッフ全員が1つになって頑張ってくれたからだと思う」と、関係者へのねぎらいの言葉を寄せた。