世界のさまざまな宗教との関係におけるキリスト者の証しと信仰の実践の在り方に関する行動規範を提言した「多宗教世界におけるキリスト者の証し:信仰の実践のための提言」(本紙による全訳はこちら)という文書が、ローマ教皇庁諸宗教対話評議会(PCID)と世界教会協議会(WCC)、世界福音同盟(WEA)の共同文書として出されてから5周年を迎えたその記念が、6月21日にPCIDの招きによりローマで祝われた。WEAが18日、公式サイトで伝えた。
ローマ教皇庁とイタリア・カトリック司教協議会、WCCとWEAの代表者、アフリカの伝統宗教、仏教、ヒンズー教、イスラム教、ジャイナ教、シーク教、道教、天理教の学者たちが6月21日、ローマで会合を開いた。2011年6月28日に公表されたこの文書は、PCIDとWCC、WEAの合同事業によるもの。
この3つの組織は、ジャン=ルイ・トーラン枢機卿(PCID)、クレア・アモス博士(WCC)、そしてトマス・シルマッヒャー教授・博士(WEA)という、各組織でそれぞれ宗教間対話を担当する最高責任者たちによって代表されていた。
PCIDの議長であるジャン=ルイ・トーラン枢機卿による基調講演の後、WCCの元スタッフであるシャンタ・プレマヴァルダーナ牧師・博士からのビデオ・メッセージがこれに続いた。この文書の実施に関する報告が、PCIDのミゲル・アンゲル・アユソ・グイゾット司教、WCCのクレア・アモス博士とキリアキ・アブツジ氏、そしてWEAのトマス・K・ジョンソン教授・博士によって発表された。
ジョンソン教授は、「行動規範、あるいは倫理規範は、一般的に必要に応じて出てくる。これは十戒についても明らかに真実であった。宗教を説くため――信仰を広め促進するための――この2011年の倫理規範が応じて出てきた必要というのは、歴史の夜明け以来、宗教の信仰が人間の対立にどれだけからんできたのかということである。・・・宗教は、暴力や操作、あるいは詐欺という形であれ、同じ宗教や同じ宗教体験を持たない人々の虐待と関わってきた。驚くほど一致した形で、ほぼ全てのキリスト教徒の代表者たちが、現代においてグローバル化によって増幅されている、この古代からの問題に、共に取り組んだのである。イエス・キリストにおいて神がこの世と和解しておられるというメッセージが、私たちが受けた最も重要な知らせであることから、私たちが自らの信仰について語らないとか、自らの信仰へと他の人々を招くことはないとは言えなかった。むしろ、私たちが語ったのは、私たちが自らの信仰について語り、他の人々を招くとき、人々を扱う良いやり方もあれば悪いやり方もあることが認識できるからだ」と語った。
ジョンソン教授は、「極端な程度の宗教的迫害、宗教をめぐる暴力、そして宗教テロリズムが著しい現代において、全ての宗教者たちが自らの信仰の正直な実践者たちを明確に区別できる普遍的な基準をはっきりと表現する時が来た。キリスト教界の中において、私たちは自らの宿題をなし終え、キリスト教の布教のための倫理規範を書いた。ここに今日代表として来ておられる全ての方々は、全ての宗教・哲学ないしイデオロギー的なメッセージの保護・宣布・促進そして普及に関する、もう1つの歴史的な倫理規定に向けて歩みを継続していくべきだ」と結んだ。
トマス・シルマッヒャー教授・博士は、WEAを代表し、WEAはPCIDやWCCと共に、例えばこの文書をさらに発展させ、あるいは宗教間対話における議論のさらなる協議を始めるなどして、さらに協力していくと宣言した。
一方、バチカン放送局は6月22日、PCIDがWCCやWEAなどと共にこの5周年を祝ったことを伝えるとともに、この会合の参加者たちが、記念行事に続いて共同声明を発表したと報じた(=文末に本紙によるその全文の日本語訳あり)。この共同声明で参加者たちは、この会合の議題と成果を説明するとともに、この共同声明に責任のある全ての組織に対し、証しの倫理と信教の自由といった問題に関する宗教間の議論を可能にするために、その「精神」がどのように拡大され得るのか考えるよう促した。
WCCも6月28日、「多宗教世界におけるキリスト者の証し:信仰の実践のための提言」というこの文書の5周年記念について公式サイトで伝え、「宣教と伝道に関するエキュメニカルな合意の里程標(りていひょう)である」と述べた。
この文書は、WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事、PCIDのジャン=ルイ・トーラン枢機卿、WEAのジェフ・タニクリフ総主事(=当時)の支持を得て公表された。
「この文書が注目に値するのは、それに記されている内容だけでなく、これら3つの組織の幅広い協力ゆえでもある。それらの間で世界のほとんどのキリスト教徒を代表しているからだ」と、WCCは説明した。
この文書は、とりわけ宗教的に多元的な文脈における、キリスト教の福音伝道の方法と倫理のための手引きとして、宣教の本質についてのキリスト教的な理解に根差した、一連の重要な原則を示している。それは公表されて以来、キリスト教界の全体で幅広く広められてきており、関連する諸問題に関するとても建設的でエキュメニカルな研究の基礎をなしている。
トヴェイト総幹事は、「私たちはこの記念をお祝いする。この『キリスト者の証し』という文書が持つ顕著な重要性は、それが福音の宣教という不可欠な働きに応用されていることにある。各地のキリスト者同士における幅広い合意は、誠実さ、慈愛、憐れみ、そして奉仕をもって、確実に福音を生き、宣べ伝える未来を約束するものである」と語った。
上記の共同声明全文(本紙が非公式に全訳したもの)は次の通り。
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ローマ教皇庁諸宗教対話評議会(PCID)の親切なご招待により、「多宗教世界におけるキリスト者の証し:信仰の実践のための提言」という文書の5周年記念に当たって、ローマ教皇庁とイタリア・カトリック司教協議会、世界教会協議会(WCC)や世界福音同盟(WEA)の代表者たちが、アフリカの伝統宗教や仏教・ヒンズー教・イスラム教・ジャイナ教・シーク教・道教、そして天理教の学者や信者とともに、2016年6月21日(火)、ローマで会合を開いた。
2011年6月28日に公表されたこの文書は、PCIDとWCC、およびWEAの合同事業であったが、それには、その第1段階においては、他の宗教に属する信者たちの参加もあった。
この記念行事は、キリスト教徒や他の信者の参加をもって、この文書に関する共通の関心についての重要な諸問題を再確認することを意図したものであった。
PCIDの議長であるジャン・ルイ・トーラン枢機卿様による主題講演の後、シカゴにある都市牧会教育のための神学校協会(米国)の会長でWCCの元スタッフであるシャンタ・プレマヴァルダーナ牧師・博士による、この文書の歴史と進展に関するビデオ・メッセージが続いた。この文書の実施に関する短い報告が、共著者の組織によって発表された。すなわち、PCIDのミゲル・アンゲル・アユソ・グイゾット司教、WCCのクレア・アモス博士とキリアキ・アブツジ氏、そしてWEAのトマス・K・ジョンソン教授・博士である。
「宗教的な隣人の目を通じた文書」が、第1会合の題目であったが、その間、アフリカの伝統宗教、仏教、ヒンズー教、イスラム教、ジャイナ教、シーク教、道教、そして天理教の代表者たちが、この文書についての自らの展望を簡潔に発表した。
その次の会合では、ローマ教皇庁とイタリア・カトリック司教協議会の役員が、「対話と出会いの文化を推進する:『キリスト者の証し』という文書の重要性」について、自らの貢献を申し出た。
「前を向いて:今日のグローバルな現実に共に対応する」という最終会合は、作業部会から出てきた幾つかの主要な点について合意することを目的としていた。お互いの尊重と宗教間対話の必要性とともに、自らの信仰についての証しをするための全ての信者の義務と権利が再確認された。これは、信教の自由が、適切な法律を通じて、全ての人々によって尊重され、国家によって保障されなくてはならないことを示している。
参加者たちはこの文書の原本について責任を負う組織に対し、証しの倫理や信教の自由といった諸問題についての宗教間の議論を可能にするために、この文書が持つ「精神」がどうすれば拡大できるのか考えるよう促した。彼らは、PCIDがこの行事を企画し、イスラム教徒の参加者たちに対してラマダンとイドゥル・フィトリのご多幸をお祈りしたことに感謝の意を表した。