宗教法人「小牧者訓練会」(国際福音キリスト教会)の牧師、卞在昌(ビュン・ジェーチャン)氏と同教団に対して、セクハラやパワハラを受けたとして元信者の女性4人と男性1人が訴え、また逆に卞氏・教団側が元信者側を名誉毀損で訴えていた一連の民事訴訟で、最高裁は14日、いずれの上告も棄却した。これにより、卞氏のセクハラ行為を認め、卞氏・教団側に計1540万円の損害賠償を支払うよう命じた1審判決が確定した。
一連の民事訴訟では、元信者側が、卞氏による元信者の女性4人に対するセクハラと(セクハラ訴訟)、元信者の男性1人に対するパワハラを訴え(パワハラ訴訟)、卞氏・教団側が元信者やその支援者ら計9人に対して、名誉を毀損されたとして損害賠償・謝罪広告掲載を要求する(名誉毀損訴訟)という、計3件が争われた。
最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は、この3つの訴訟すべてで上告を棄却。2審の東京高裁もすべての訴訟で控訴を棄却していたため、1審の東京地裁の判決が確定した。1審では、セクハラ訴訟で卞氏のセクハラ行為を認定、損害賠償として1540万円を支払うよう命じる一方、パワハラ訴訟、名誉毀損訴訟については、双方の訴えを退けていた。
最高裁の決定を受け、元信者側を支援してきた「モルデカイの会」の加藤光一代表は本紙の取材に応じ、「妥当な決定。1審で卞牧師のセクハラ行為が認められたので、これが大きかったと思う。この1審の判決が確定したわけですから、教団側も結果を真摯(しんし)に受け止めてほしい」とコメント。また、「8年間苦労してきた原告の女性たちにとっては、非常に妥当な、受け入れられる判決だと思っています。この8年間の闘いが実を結んだと言えるのでは」と語った。
一方、卞氏・教団側の代理人を務める八重洲法律事務所の三木祥史弁護士は本紙の取材に、「このたびの上告棄却決定に対しては、代理人として非常に残念に思っています」とコメント。セクハラの被害を訴えた女性らの証言については、「いずれも裏付けの証拠もなく、その証言内容も曖昧で矛盾も多い」と言い、「今回の一連の件は、卞氏としてはまったく事実無根のことであって、民事の判決が確定したとしても、真実が何かは変わりあるものではありません」と語った。
なお、卞氏は元信者の女性4人のうち1人に対して乱暴した容疑で、2010年に準強姦(ごうかん)罪で起訴されているが、この刑事訴訟では卞氏のアリバイ成立の可能性があるとして、無罪が確定している。