あらゆる州を代表して集まった多数のキリスト教徒とイスラム教徒の群衆が10日、その州の名を書いたプラカードを掲げ、首都デリーのジャンタル・マンタルに押し寄せた。参加者は、ダリットのキリスト教徒とイスラム教徒に対する「差別と不正義」を終わらせるよう政府に要求するため、沈黙の抗議活動を行った。
「ダリット・クリスチャンのための調整委員会(the National Coordination Committee for Dalit Christians)」の名で組織された抗議活動には、インド・カトリック司教協議会(CBCI)会長のバーセリオス・クレーミス・トットゥンカル枢機卿、南インド教会(CBI)議長のゴバダ・ディバシルバダム博士、北インド教会(CNI)事務局長のアルワン・マシー氏が指導し、カトリックとプロテスタントの指導者や多くのダリット・クリスチャンの指導者らが参加した。調整委員会は、政府とナレンドラ・モディ首相に対し、政府自身が設置したさまざまな委員会によって勧告されている通り、「指定・カースト(不可触民)」の地位を宗教的に中立にするようアピールするために結成された。
集会の開催のあいさつで、トットゥンカル枢機卿は、「私たちは敬愛するナレンドラ・モディ首相に対し、このインド人(ダリット)に正義をもたらすため、適切に評価することを、ダリット・クリスチャンにもダリット・ムスリムにも正義をもたらすことをお願いします。私たちの市民に対し正義を拒まないでください。ある人はキリスト教徒の共同体に、ある人はイスラム教徒の共同体に、またヒンズー教やその他の共同体に属しているでしょう。全てのインド人を、その宗教ではなくインド憲法に基づき扱ってください」とアピールした。
トットゥンカル枢機卿が言及した「宗教」の不平等な取り扱いとは、ヒンズー教と、シク教徒、仏教徒の同胞が持つ「スケジュールド・カースト」の地位を持たないダリット・クリスチャンとダリット・ムスリムに対する差別のことだ。この規制は憲法にはないが、その地位を拡大しない根拠は1950年大統領令第3項にある。
「ダリット・クリスチャンとダリット・ムスリムはむしろ解放を待っています。この不正義はいつまで続くのでしょうか」とゴバダ・ディバシルバダム博士は語った。「私たちは政府に対し、宗教に関わりなく全ての市民に平等な権利を与えるよう求めます」とアルワン・マシー氏は語った。
大規模な座り込みによる抗議活動は当初、ラムリーラ・グラウンドから議会にかけての3キロで行われる計画だった。非暴力の抗議者は、黒い布で自身に猿ぐつわをし、一言も発さなかった。
ダリット・ムスリムとダリット・クリスチャンがいかにダリット・ヒンズーの同胞と同じ権利を否定されているかを示すため、最高裁判所に請願をした活動家のトーマス・フランクリン・シーザー氏は、沈黙の抗議者たちに、第3項の違憲性を問い、削除を要求する請願をしたと述べた。
「差別は非差別と信教の自由について定めたインド憲法第14条、第15条および第25条に違反しています。・・・私たちの愛する指導者B・R・アンベードカル博士が書いたインド憲法の世俗主義の原則に違反していますし、この請願を実行するかどうかについて政府が設置した委員会によっても強く糾弾されました」とシーザー氏。「政府は、直ちにランガナス・ミシュラ判事の委員会の勧告を実行に移さなければなりません」
報道発表によれば、インド中央政府は宗教的言語的少数派委員会(NCRLM)で知られる、元裁判長のランガナス・ミシュラ氏を委員長とする委員会を指名し、問題を取り扱わせた。包括的な報告書は2007年5月、当時のマンモハン・シン首相に提出され、スケジュールド・カーストの地位を宗教的に中立にするよう勧告するものだったが、何の行動も起こされなかった。
報道発表では、「2002年にインド自民党(BJP)とその国民民主同盟(NDA)により指名された憲法機能検討委員会(NCRWC)も、スケジュールド・カーストからキリスト教へ改宗することは1989年制定のスケジュールド・カースト・指定部族への虐待防止法により保護されるべきであると勧告しました。ヒンズー教との同胞と同じように犯罪や残虐行為にさらされているからです。2011年、バンガロールで開かれたBJPの少数派による反政府デモについての理事委員会(NECMM)は、ダリット・クリスチャンとダリット・ムスリムをスケジュールド・カーストリストから除外することはインド国民会議派の罪であり、修正されるべきだという決議を可決しました」
発表ではさらに、ランガナス・ミシュラ(NCRLM)報告は断固として、「スケジュールド・カーストの身分をヒンズー教徒に限定し、後にシク教徒と仏教徒を含めた1950年憲法令(スケジュールド・カースト)第3項はいまだイスラム教徒、キリスト教徒、ジャイナ教徒、パルシー教徒を除外したままです。スケジュールド・カーストの地位と宗教との関連をなくし、スケジュールド・カーストの地位を指定部族のように、完全に宗教的に中立なものとするために、第3項を完全に削除すべきだと私たちは勧告します」と言及した。
また発表では、スケジュールド・カースト委員会(NCSC) も2010年4月22日、第3項の削除を視野に入れた宗教的言語的少数派委員会(NCRLM) の勧告を認知し、正当に是認していたと指摘した。「そして少数派委員会(NCM)もまた、深い研究の後、同様のことを非常に強く勧告しています」「これらの全てのポジティブな進歩にもかかわらず、先の統一進歩同盟(UPA)政権は、この問題について行動することを怠りました」
しかし、参加者は、現政権が少数派に対するこの「不正義」に終止符を打つことを望んでいる。参加者が午前9時半から終日占拠したジャンタル・マンタルには、バナー、プラカード、トラクトが掲げられた。さまざまな州から参加者が集まり、それぞれの州のバナーを持っていた。
カルナータカ州の指導者の1人で「マザー・ケア・ヒューマニタリアン・エイド」創始者のマグリン・F・ジェリー氏は、「報道機関は私たちの苦難を強く取り上げません」と嘆き、取材に対し「私は、報道機関が同胞のインド人が直面しているこういった不正義をもっと取り上げることを望みます」と答えた。
今回の抗議活動の背景には、タワル・チャンド・ゲーロット社会正義権限付与大臣が2月16日に、スケジュールド・カーストの地位をダリット・クリスチャンとダリット・ムスリムに拡大しないと発表したことがあり、対話が始まることを望んでいる。
著名なキリスト教指導者で作家のジョン・ダヤル博士は、「この国に信教の自由はなく」、大臣はそれを「再確認した」だけだと述べた。
「驚くことではありません。人民党は過去20年にわたってそう言い続けており、大臣はそれを再確認しただけです。このことは少数派、その多くがキリスト教徒であるダリットに対する彼らの態度を示しています。なぜそれを望まないか、彼らは説明しません」
「複数の政党がオフレコで、もし地位を与えれば、皆がキリスト教徒になるだろうと言いました。ダリットには信教の自由はありません。これは信教の自由を止めるものではないでしょうか。ダリット・ヒンズーにとっては、信教の自由はありません。もし生き残りたければ、ヒンズー教徒で居続けなければならないからです。もしその人がムスリムになれば、全てを失います。一人の人に信教の自由がなければ、信教の自由自体が存在しません」とダヤル博士。
しかし、参加者は希望を失ってはいない。彼らは首相に対し、不正義を終わらせるよう熱心に要求している。報道向けの資料では、「敬愛するナレンドラ・モディ首相率いる国民民主同盟政権への熱心な希望を持って、私たちは首相に、これらの少数派に対する継続した不正義を終わらせるよう要求します。そしてダリット・クリスチャンとダリット・ムスリムにもスケジュールド・カーストの地位を拡大するようにとの、ランガナス・ミシュラ委員会(宗教的言語的少数派委員会)の勧告を速やかに実行するよう一心に求めます」と述べている。