相模原市の墓地で昨年6月、阿部由香利さん=当時(25)、東京都新宿区=の遺体が見つかった事件で、東京地検は11日、阿部さんの元交際相手・佐藤一麿(かずまろ)容疑者(30)=東京都渋谷区=を殺人罪で起訴した。一方、死体遺棄罪で佐藤被告とともに昨年7月に起訴されている農業・秋山智咲(ちさき)被告(24)は、殺人ほう助罪で逮捕されていたが、処分保留のまま釈放された。共同通信が伝えた。
阿部さんは2013年ごろ、長男(9)とともに行方が分からなくなっており、警察が行方を捜していたが昨年6月、相模原市の墓地でブルーシートに包まれた状態で見つかった。佐藤被告と、佐藤被告の交際相手であった秋山被告が同月、死体遺棄容疑で逮捕され、2人とも翌7月に死体遺棄罪で起訴された。佐藤被告は死体遺棄罪で既に有罪が確定しており、秋山被告は現在も公判が続いている。
そして、昨年6月の遺体発見と死体遺棄容疑による逮捕から約8カ月後の今年2月、佐藤被告は殺人容疑で、秋山被告は殺人ほう助容疑で逮捕された。佐藤被告は、13年6月10日ごろ、阿部さんの自宅で、阿部さんに睡眠薬を飲ませた上で首を絞めて殺害したとされている。秋山被告は、佐藤被告の指示で、山梨県や東京都など複数の薬局などで睡眠薬を購入していた。
朝日新聞によると、佐藤被告は調べに対し、阿部さんについて「睡眠薬を飲んで自殺したと思う」「気付いたら死んでいた」などと話し、阿部さんの殺害については否認している。
また、同紙によると、秋山被告は「犬の死体だと思っていた」「睡眠薬を買っていましたが、目的は聞いていません」などと話し、死体遺棄罪、殺人ほう助容疑のいずれも否認している。
毎日新聞によると、阿部さんの遺体からは、通常飲む1回分の服用量を大幅に上回る量の睡眠薬が検出されており、秋山被告が購入した睡眠薬の成分と一致していたという。また、阿部さんが生前、睡眠薬を日常的に飲んでいた形跡もなく、トラブルなども確認できなかったことから、睡眠薬の大量服用による自殺を図った可能性は低いとみられているという。
一方、阿部さんの長男の行方はいまだに分かっていない。産経新聞によると、阿部さんと佐藤被告は、07〜08年ごろから13年6月の事件発生前まで交際しており、長男とも面識があったという。
同紙によると、佐藤被告は飲食店でアルバイトをしていたが、テレビ局のプロデューサーを装っていたといい、阿部さんと破局した後、アナウンサーを目指していたという秋山被告と交際。阿部さんの遺体は相模原の墓地に埋められる前、秋山被告の自宅に約1カ月間放置されていたという。秋山被告は友人に、「彼(佐藤被告)が芸能プロ社長からトラの死体を預かっていて、違法だから隠さなければいけない」などと説明していたという。