イスラムと親しい韓国政府
サミュエル・ハンチントンは「文明の衝突」で、儒教とイスラムとは敵対関係ではなく親しい関係だと述べている。
しかし今アジアでは儒教国家は存在しない。彼は、儒教とイスラムはともに権威主義文化であり、親しくなることができるというのだ。儒教とイスラムが親しいという代表例は、北朝鮮と中東との関係だ。あいにく北朝鮮はもう長い間ミサイルと核兵器分野で中東と協力関係にある。北朝鮮とシリアとの核協力に不安を感じたイスラエルは昨年、シリアの核施設を爆撃した。私は2007年にシリアを訪問し、同国の福音主義のリーダーたちに講義したことがある。ある牧師は私に北朝鮮がどうかと問うた。北朝鮮とシリアとの関係は以前から近かったために、彼らの関心は韓国より北朝鮮にあった。中東戦争時の1967年、北朝鮮はシリアに空軍操縦士を派遣したと言う。中東の多くの人々は韓国より北朝鮮により親近感を感じている。
おもしろいことに中国の地下教会の牧師や信者らが、21世紀のイスラム宣教は中国教会がしなければならないと主張している。その理由は中国とイスラムは親しいからだというのだ。事実、中国地下教会(非公認教会)の多くの宣教師たちが、経済的支援やイスラム宣教に対する訓練もなしに中東国家と中央アジアで活動している。
第2次大戦以後、多くのムスリム国家は親ソ、反米政策を選んだ。イランやエジプトなど、親米政策を取った国は、内部から多くの反発を受けた。その代表的な例としてイラクは、60年代に軍事政権が誕生し、親英、親米から親ソに変わった。ムスリム諸国の親ソ、親中政策は単なる西欧植民地主義に対する反発ではない。宗教的に共産主義は無神論という点でイスラムとの一致が難しく見えるが、理念的には共通点がある。すなわち反資本主義、反民主主義、反キリスト教だ。同時に共産主義とイスラムは、個人主義より集団主義、あるいは全体主義だ。個人の尊厳よりも集団の一体感と団結を強調する。
ムスリムたちは石油をアラーが与えた「黒い黄金」の贈り物だと誇る。しかし、多くのムスリム諸国はおびただしい石油生産にもかかわらず国民の生活が困窮している。イランは軍人たちの軍服も個人が買わなければならない。国際政治学者たちはこれを石油の呪いと言う。原因は不正腐敗と社会主義の経済政策だ。そのために今では資本主義に切り替えている。
【全浩鎭(ジョン・ホジン)】 1940年、大阪生まれ。韓国・高神大学、同大学院卒業、米国・ウェストミンスター神学校神学修士課程修了、米国・フラー神学大学宣教学博士課程修了、英国国立ウェールズ大学哲学博士課程修了。その後、高神大学学長、平澤大学学長、亜細亜連合神学大学大学院院長、トーチ・トリニティー神学大学院教授などを歴任。現在は、イスラエル及びイスラムネットワーク会長、韓半島国際大学教授。著書に、「宣教学」(85年)、「宗教多元主義と他宗教宣教戦略」(92年)、「アジア・キリスト教とミッション」(95年)、「人種葛藤時代と未伝道種族ミッション」(00年)、「イスラム―宗教家イデオロギーか」(02年)、「文明衝突時代のミッション」(03年)、「転換点に立つ中東とイスラム」(05年)(いずれも韓国語)などがある。