イラクで、「御公現の祝日(エピファニ)」の6日、正教会の建物に対して攻撃が加えられ、教会や修道院など少なくとも7つの建物に被害があったことが7日までにわかった。
アラブ首長国連邦のカハリージタイムス紙によれば、攻撃には迫撃砲、爆破装置、自動車爆弾が用いられ、バグダッドやイラク北部のモスールの教会や修道院が標的とされた。ボイス・オブ・イラク・ニュース・エージェンシーによれば、守衛2人を含め、少なくとも6人が負傷したという。
モスールにある聖マスキンタ教会に対する攻撃では、爆弾によって教会の外壁が破壊され、教会の児童養護施設の中にいたシスターや子供たちがパニックに陥った。
アッシリア国際ニュース・エージェンシーによると、カルデア主教のファラク・ラホ氏は、アッシリアのテレビ局イシュタルに対して「非常に動揺している。同じ時刻に多数の爆発が発生しており、計画的犯行であることは明らかだ。我々は、イスラムの兄弟らと同じ時に、イード(断食明けの祭典)とクリスマスを祝ったばかりで、これまで上手くいっていた。しかし、我々に敵意を持つ人々は、我々に対する攻撃をいまだにやめたことがない。イラク政府は、我々キリスト教徒への暴力に対して、直ちに行動を起こすべきだ」と語った。
これに対して、イスラム教スンニ派のタリク・アルハシミ副大統領ははキリスト教徒が兄弟であるとし、今回の攻撃に対して非難と遺憾の念を表明した。地元紙によるとアルハシミ副大統領は、「喜びを悲しみに一変させたこの残忍な攻撃に対して、私は彼ら(キリスト教徒)と共に反対する」と語った。
イラクのキリスト教徒は人口の約3%を占め、その多くはカルデア教会に所属している。一方、03年の米国による攻撃によってイラク国外への避難を強いられ、攻撃前の120万人から現在は60万人にまで減少しているという。同国においてキリスト教徒は政治的、軍事的な権力がないため、特に脆弱な少数派となっており、現状以上の保護が講じられない場合、イラクに在住するキリスト教徒が殺害や強制移住などによって根絶してしまうのではないかと危惧されている。