【CJC=東京】ブラジル東北部の乾燥地帯へサンフランシスコ川の水を流す大型用水路工事に反対してカトリック教会ソブラディノ教区のルイズ・フラビオ・カピオ司教(61)が先月27日断食抗議を開始した。
工事は、サンフランシスコ川の分流により半乾燥地域をかんがいする全長720キロにおよぶ用水路を建設するもので、総工費30億米ドル(約3400億円)とされる大規模な水力発電計画の一環として行われる。人造湖も建設される。
政府は17日、司教に計画の影響を受ける地域住民のための追加的な措置を実施する用意があると伝えたが、司教は不十分だとして政府の申し出を拒否、21日目の同日からは水をのむだけで点滴注射を中止した。ブラジル全土で数多くの同情断食が行われている。
司教は体重が8キロ減った上、腎不全を起こしかけており、バチカン(ローマ教皇庁)やブラジル・カトリック教会も断食中止を促しているという。
司教がルーラ大統領に提出した要望は、サンフランシスコ川の工事即刻中止、陸軍設営隊の撤収、荒廃したサンフランシスコ川の流れ、沿岸などの復旧、ジャグアリーベ、ピラニャス・アスー、パルナイーバの3河川の手入れ、東北部の開発プランの具体化など8項目。
首都ブラジリアでは分流反対デモが18日に行われた。約300人が三権広場及び最高裁判所前に集まった。自由社会主義党(PSOL)のエロイーザ・エレナ党首(前大統領候補)も参加した。
上院は同日、ジョゼ・ネリー上院議員提案により、断食スト対策委員会設置を決めた。大統領は、工事を08年1月7日まで中止した。
一方、ブラジル最高裁は19日、分流工事を認める判決を言い渡した。この工事について、下級裁判所は、環境にどれほどの影響を及ぼすかについての調査が正確に実施されなかったとして工事の中止を命じていた。最高裁判決は、この決定を覆すものとなった。
司教は最高裁の決定を伝えられると失神、意識が戻ると深い失望を示したという。