「ある朝、母が宗教に入っていることを知る。ぼくはただ、対話をするしかなかった。」
名古屋シネマテーク(愛知県名古屋市)で21日に始まった第21回自主制作映画フェスティバルで、記録映画「belief」(作・土居哲真)が21日午後2時半からと23日午後6時半からの2回上映される。「belief」は、監督の土居さん自身の家族について、その真実の姿を映し出すドキュメンタリー映画。カルト視される宗教に入った母にカメラを向け、対話を続ける息子の姿から「家族」という関係の成り立ちを問う。
土居さん自身は息子を演じながらも、映画の全編を自らが撮影。内容は、母親をはじめとする家族、宗教信者、宗教識者、心理学者、弁護士らとの対話によって構成されている。当事者として、一方、その実態をカメラを通して記録し伝える第三者として、受け入れがたい現実を映し出す。印鑑などの購入、多額の献金・・・。特別信仰心に篤い母ではないはずなのに、なぜそのような行動に走ったのか。同映画は、「カルト問題についてのドキュメンタリー」というだけではなく、母親と息子がいかに強く結びついているのかの記録でもある。
推薦コメントではカルト対策にあたる各界からの言葉が寄せられている。
「カルト被害は財産被害だけではない。家族被害や精神被害に及ぶ。この映画は、カルトに入信した母を引きとめようとする子ども、家族の葛藤を克明に描くことで、被害者や家族がおちいる被害の深刻さをリアルに描いた。心にしみとおるドキュメンタリー映画だ」(紀藤正樹・弁護士)
「家族の愛情が精神の呪縛を解いていくプロセスは普遍的な感動を与えてくれる。『ぼくはただ、対話をするしかなかった』――この土居哲真の『つぶやき』にこそカルトから脱出するための最大にして決定的な秘訣がある。『どうすればいいのか』と悩む人たちに一人でも多く届けと願うばかりだ」(有田芳生・ジャーナリスト)
映画「belief」の上映時間は62分。「カルトとは何か、家族とは何か」の問いに対して一つの答えが描き出される。
【土居哲真】 1975年生まれ。大学入学と同時に映画制作を開始。京都大学文学部美学美術史学専修卒業。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了。