「神は真実な方ですから、あなたがたを、耐えられないほどの試練に会わせることはなさいません。むしろ、耐えられるように、試練とともに脱出の道も備えてくださいます」(Ⅰコリント10:13)
アメリカの成長している教会は、教会セミナーを開催し、自分たちがどのようにして成長できたかをシェアするプログラムを用意しています。ある教会ではビジネススクールの出身者をスタッフに加えています。そのスタッフは公認会計士の資格を持ち、教会の運営や会計にアドバイスし、信徒のビジネスの相談にも応じていました。また、聖書を基にして語る経営論は日本の経済評論家にも影響を与え、「バイブルメソッド」として引用されています。
日本のクリスチャンの経営者も信仰者の立場から助言を与えてくれる会計士やコンサルタントを必要としているのではないかと思います。
私の知り合いの経営コンサルタントは「もし経営危機に陥っても、立て直す方法は一通りではない、10通りくらいある」と断言しています。もし一つの方法が有効でなくても決して諦めてはいけないと思います。
ある方はペンション経営に夢を持ち、思い入れが強すぎて、過剰な設備投資をし、3億円の負債を抱えてしまいました。自分の力だけではどうにもならないところまで追い詰められました。彼の最後の望みは、自分の夢を賭けたペンションを何とか残せないかということでした。経営カウンセラーや商工調停士に相談した結果、彼の負債は免除されることになったのですが、土地とペンションは債権団に没収され、ペナルティーとして破産しなければなりませんでした。
没収されたペンションは、第三者に譲渡される予定でしたが、彼の息子に1500万円で売り渡されることになりました。しかも国の制度資金を活用するということで15年の分割が認められたのです。彼自身は事業の代表者ではなくなりましたが、一人の従業員として同じペンションで働くことが認められたのです。これは書類上のことですので、傍目には今までと同じように仕事が続けられたのです。
ある経営者は資金繰りの苦しさからつい闇金融に頼ってしまいました。高い利息が負債を雪だるま式に膨らませてしまい、とうとう夜逃げをするか一家心中というところまで追い詰められました。
最後の手段ということで、彼は金融の専門家のアドバイスに従い、闇金融の事務所に乗り込みます。「借りたお金は返すから、利息を安くしてくれ」という交渉に行ったのです。彼は7時間近く拘束状態になりますが、粘り強く交渉を続けました。最終的には「元金だけは返す」ということで法定利息に基づいて利息を計算した結果、過払い金があったということで、借入金は帳消しになりました。(注:彼は万が一のことを考え、拘束時間があまりにも長くなったときは、助けが来るように考えていました。「これは危険なことですので、決して真似しないでください」と言っていました。)
しかし、金融機関でも国家機関であっても、相談と交渉が大切です。支払いが困難であると分かった時点で交渉することが必要です。「たとい、死の陰の谷を歩くことがあっても、私はわざわいを恐れません。あなたが私とともにおられますから」(詩篇23:4)
経営がうまくいかないとか、負債があるということは大変つらいことであり、心が押し潰されたようになります。しかし、恐れてはいけないのです。神があなたと共におられ、助けようとしておられます。「神が私たちの味方であるなら、だれが私たちに敵対できるでしょう」(ローマ8:31)
人知では計り知ることのできない困難に直面したとしても、「脱出の道」が備えられることを信じて前に進まなければいけないのです。
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穂森幸一(ほもり・こういち)
1973年、大阪聖書学院卒業。75年から96年まで鹿児島キリストの教会牧師。88年から鹿児島県内のホテル、結婚式場でチャペル結婚式の司式に従事する。2007年、株式会社カナルファを設立。09年には鹿児島県知事より、「花と音楽に包まれて故人を送り出すキリスト教葬儀の企画、施工」というテーマにより経営革新計画の承認を受ける。著書に『備えてくださる神さま』(1975年、いのちのことば社)、『よりよい夫婦関係を築くために―聖書に学ぶ結婚カウンセリング』(2002年、イーグレープ)。