教会、団体、企業、学校、サークル、個人のためのフリーマーケット「いのり☆フェスティバル2015」(通称:いのフェス)が10月31日、大野キリスト教会(神奈川県相模大野市)で開催された。5回目(関西を含めると7回目)を迎える今回のコピーは、「ネットで スマホで SNSで あらゆるワクも時空も超えて いま宗教者たちが語り出す! 意外に身近な知らないセカイ 信じる心が生み出すミライ 鳴らせ、使徒たちのハーモニー! 響け、奇跡の聖譚曲(オラトリオ)!!」。教派・教団、ミニストリーの枠を超えた、各団体によるブース出店に加え、ステージには超宗教系ラジオ番組関係者が集まって、キリスト教の枠を超えた宗教者がトークを繰り広げるなどして会場を盛り上げた。
ブース出店数は約20で、毎度おなじみとなっている「復活書店」の古書セールをはじめ、キリスト教にちなんだ素材の石けんを販売する「miriam soap」などの物販ブースや、「㈱創世 ライフワークス社」の終活相談コーナー、「平和をつくる会と憲法9条にノーベル平和賞を実行委員会」による署名コーナーなどが設けられていた。聖公会関係の小物・書籍販売、アングリカン・プレーヤー・ビーズ制作ブースを展開していた「にこらす本舗2015」のスタッフの女性は、2年前のいのフェスに来場したことをきっかけに教会に導かれ、洗礼を受けたと話してくれた。教会や専門書店に接点がない人が直接触れる場を生み出そうと、「草の根」の信徒レベルで協働する場として始められたこのイベントが、確かにその働きを果たしていることの証しだ。また、マンガ伝道を方針としている牧師「家名」、聖書同人作家を目指している「れなりん」などの作家ブースも賑わいを見せ、このイベントの特徴の一つである教会版「コミケ」(コミックマーケット)らしさを大いに発揮していた。
メーン会場ステージでは、お笑いライブ、「和でひもとく聖書―語りと歌と謡による『平和の祈り』」、「超宗教系ラジオ全員集合!」が行われた。楽器の演奏と腹話術を融合させた芸を披露したお笑い芸人は、台湾出身の鄭凱元(ていかいげん)さん。「だれが生島ヒロシですか!」と自虐ネタで笑いをとったり、キーボードを弾きながら、相棒の人形である福星(ふくせい)と腹話術で輪唱してみせたりすると、観客から拍手が湧いた。
「和でひもとく聖書」のゲストとして登壇したのは、能楽師の安田登さんと、槻宅聡さん、そしてライアー奏者の三野友子さん。遠藤周作の『イエスの生涯』から、山上の垂訓の場面を、ライアーの伴奏に合わせた能の節の語りで表現した。カトリック信者の槻宅さんの影響を受けてキリスト教に関心を持つようになり、ギリシャ語やヘブライ語で聖書を読むことが趣味となったという安田さんは、イエス・キリストが話した言葉を原文ギリシャ語のまま、能の節に乗せて語った。和と聖書の世界の違和感を感じさせないコラボレーションに、観客は驚きつつ静かに耳を傾けた。トークセッションでは、安田さんと槻宅さんが聖書に関連する舞台を行ったのは今回が2回目であることが明かされ、「キリスト教を能舞台で表現するのは、日本で布教が始まった15世紀からすでにあったので決して新しいことではないし、グレゴリオ聖歌のユニゾンと能の節はとても似ているので、聖書の世界とも合っていると思う。これからもっと機会が与えられれば」などと盛り上がった。
「超宗教系ラジオ全員集合!」の呼び掛けで集まったのは、3つの番組。町田・相模原地域に住む牧師・住職・ムスリムの3人が語り合うネットラジオ番組「超宗教系コミュニティラジオ ピカステ!」から、ムスリムのDJナセルと、中野拓哉牧師。Youtubeで動画を配信しているお気軽教会バラエティー番組「チャーチ・リサーチ☆」からは、ナビゲーターを務めるNon♪とROO。そして超宗教系ラジオの先駆け、関西の宮司・住職、牧師がDJを務めるFM番組「8時だヨ!神さま仏さま」からは、ポンこと福島旭牧師が参加した。Non♪とROOによる「チャーチ・リサーチ☆」テーマ曲のミニライブ、ROOと福島牧師をゲストに迎えたピカステの公開収録、そして最後には全参加者が舞台に勢ぞろいして「宗教行事の世俗化モンダイ」「メディアは宗教を変える?」「ぶっちゃけこんな教会は嫌だ」と、お題に合わせた軽快なトークを繰り広げた。普段、親父ギャグばかりを連発し、壮大なボケで周囲を振り回している福島牧師が、「世俗化という言葉自体、使われ方が違う」「メリークリスマスのメリーの意味に疑問を感じる」など、非常に真面目な表情で真面目に応える姿に一同から突っこみが入れられ、会場全体は温かな笑いで包まれた。
いのフェスは、教派や企業、学校の枠にとらわれない自由な立場の有志実行委員会によって開催されている。首都圏以外での開催も望む声が上がっているが、予算、人員などの都合で開催の実現には至っていない状況だ。現在、名古屋、広島での開催を視野に入れて準備・検討がなされており、オリジナルグッズを販売するなどして協力を呼び掛けている。問い合わせは、いのフェス実行委員会(ホームページ、メール:inofest(アットマーク)gmail.com)まで。