1967年に茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件「布川事件」で、無期懲役が下された後、4年前に再審無罪となった杉山卓男(たかお)さんが10月27日、死去した。69歳だった。NHKなどが伝えた。
当時21歳の青年だった杉山さんは、当時20歳だった桜井昌司さん(68)と共に、独り暮らしの大工の男性(当時62)を殺害し、現金などを奪った容疑で逮捕された。2人は公判中、自白が強要されたものだったと主張したが、認められず、78年に最高裁判所で上告が棄却され、無期懲役が確定した。
96年に仮釈放された後も無実を訴え、2010年から再審が開始。翌11年に強盗殺人罪について無罪判決が言い渡され、検察が控訴を断念し、無罪が確定した。逮捕から再審無罪確定までには44年かかっており、これは戦後の事件では最長。
桜井さんはNHKに対し、「彼(杉山さん)は同じ痛みを感じた同志だっただけに亡くなったことに深い悲しみを感じています。もっと生きて自らの体験を話してもらいたかったですが、これからは彼の分まで自分が話をしていきたい」と話した。
事件を扱った作品には、伊佐千尋著『舵のない船—布川事件の不正義』(1993年)や、佐野洋著『檻の中の詩(うた)―ノンフィクション・布川事件』(同)などがある。杉山さん自身も著書『冤罪放浪記 布川事件 元・無期懲役囚の告白』(2013年)を出しており、桜井さんも著書『獄中詩集 壁のうた—無実の二十九年・魂の記録』(01年)がある。