米国聖公会初のアフリカ系首座主教が着座した。着座礼拝では様々な伝統的儀式が行われ、多様性に焦点が当てられた。
ノースカロライナ州出身のマイケル・カリー首座主教はワシントン大聖堂で1日、米国聖公会で初の黒人首座主教となり、歴史の1ページに名を刻んだ。
「新しい首座主教とご家族を歓迎しましょう」と、前首座主教のキャサリン・ジェファーツ・ショーリ氏が語り掛けると、大聖堂に詰めかけた群衆は大きな拍手を送った。
首座主教として初めての説教でカリー氏は、教派の刷新を強く呼び掛け、「神はまだ米国聖公会との働きを終えていません」と語った。
「神にはご自身が過去になされたことが、再びおできになります。紅海を分けられた神には、全く同じことが再びおできになります。死人をよみがえらせた神には、全く同じことが再びおできになります」とカリー首座主教は宣言した。
「イエスは、宗教を始めたり慣例を作ったりするために来られたのではありません。イエスはムーブメントを作りだし、動かし始め、繰り広げるために来られたのです」
6月にユタ州ソルトレークシティで行われた第78回総会で、カリー首座主教は米国聖公会第27代首座主教に選任された。4人が立候補したが、カリー首座主教はたった1回の投票で総投票数174票のうち121票を獲得した。
黒人聖公会員連合(UBE)のアネット・ブキャナン代表は投票結果を受け、カリー氏の選出に対し「圧倒され」そして「興奮して」いるとの声明を発表した。
「同僚の一人は、自分たちの生涯の中で黒人の米国大統領と黒人首座主教の誕生を見ることができるとは決して思っていなかったと言っていました」とブキャナン氏。
「次期首座主教のマイケル・カリー氏は、UBEの長年のメンバーでした。彼は、教会が全ての人、特にアフリカ系米国人や米国に渡ってきたアフリカ人に開かれているものだと考えています。そして私たちは、彼とのこれまでの経験に基づき、カリー主教が教会の全てにわたってその働きを拡大するだろうと確信しています」
カリー首座主教の着座礼拝は、伝統的な儀式の習合と、人種的、文化的、宗教的な多様性を反映した現代的なスタイルの両方が混在した。
礼拝での音楽には、ラテン・コンテンポラリー、黒人霊歌、ネイティブ・アメリカンの音楽が選ばれた。聖書朗読は主として英語で行われたが、時にスペイン語やネイティブ・アメリカンの言語でも行われた。
カリー氏のための祈りでは、彼の働きを考慮し、ユダヤ教とイスラム教の指導者が祈りをささげた。
礼拝には伝統的な要素も取り入れられ、カリー氏が大聖堂の正面玄関を杖でノックしそれに応答する儀礼や、聖職者の行列などもあった。
伝統と現代的なスタイルの融合は、有名な「リパブリック賛歌」に例えられるだろう。説教の中でカリー首座主教は、かつての奴隷廃止運動家ジュリア・ワード・ハウが作詞した1節の一部を変え、「イエスが人を聖なるものとするために死なれた通り、私たちは人々を自由にするために生きよう」と述べた。
礼拝の終盤で、聖歌隊はこの歌をオリジナルの歌詞「As He died to make folk holy, let us die to set all free.(イエスが人を聖なるものとするために死なれた通り、私たちは人々を自由にするために死のう)」で歌った。
米国聖公会の指導者としてカリー首座主教は、ここ数年間信者数の減少と神学的な分裂に直面しているこの教派の手綱を取ることとなる。米国聖公会が同性愛の受容度を深めていることは、特に教派内での議論の元となり、数十もの教会や、所によっては教区ごと米国聖公会を去っている。カリー首座主教はその職杖を受け継ぐとともに、サウスカロライナ教区の所有財産をめぐり、誰が商標と資産の正当な所有権を持つかについて州最高裁判所の司法判断を待つこととなる。
カリー首座主教は説教の中でこれらの議論に触れることはなかったが、教会が「世界をひっくり返し、正しい面を打ち出す」ことを含む「イエス・ムーブメント」に活発に参加する必要性を強調した。