ノルウェーのノーベル委員会は9日、2015年のノーベル平和賞を、北アフリカ・チュニジアの民主化に貢献した4組織からなる運動団体「国民対話カルテット」に授与すると発表した。2011年にチュニジアで起こった「ジャスミン革命」に端を発した中東の民主化運動は「アラブの春」と呼ばれ、チュニジアで政治対立を対話で解消し、民主化に貢献したことが評価された。
一方、昨年に続き、「憲法9条を保持している日本国民」の受賞を目指して活動してきた「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会は9日、神奈川県相模原市内で記者会見を開き、ノルウェーでの発表の様子を集まった報道陣と共に見守った。この日の午後2時半までに集まった署名は、69万3951筆(紙署名61万5272筆、ネット署名7万8679筆)。会見冒頭、同実行委の共同代表でクリスチャンの主婦・鷹巣直美さん(38)は、「署名をしてくださった方々、推薦人になってくださった方々にお礼を申し上げたい」と述べた。
昨年受賞を逃した後も、同実行委では、さまざまな形で活動をしてきた。昨年は、発表直後の12月、この取り組みが、北朝鮮と国境を接する韓国の江原道(カンウォンド)と江原日報社が主催する「DNZ(非武装地帯)平和賞2014」で「特別賞」を受賞した。今年は、ノーベル平和賞推薦締め切りの2月1日までに、超党派の国会議員61人が推薦人となり、連名の推薦状が提出され、大学教授など他の23人の推薦人と合わせ84人が推薦人となった。
また、日本と同じく平和憲法を保持する中米コスタリカの国会では、全会一致で日本・コスタリカの両国民をノーベル平和賞候補として推薦することを決定した。一方、5月から同実行委では、憲法の平和主義に反するとして、安全保障関連法案に反対し、廃案を要請する署名活動を開始。その翌月にノーベル委員会から受理通知が届き、「憲法9条を保持している日本国民」が平和賞候補として2度目のノミネートを果たした。
発表時間が迫る中、同じく共同代表の石垣義昭さん(74)は、「私たちが、『憲法9条を保持し続けてきた日本国民にノーベル平和賞を』と言うのは、世界中の一人一人がこの平和憲法の理念を自分のものとして、全ての人の平和的生存を実現したいと思うからです。しかし、世界は深い混迷の中にあり、紛争に明け暮れ、平穏に暮らしていた人々が次々と難民化している。武力による介入が紛争の解決ではないことを表している」と話した。
今年は受賞には至らなかったが、鷹巣さんも石垣さんも発表を聞くと、受賞したチュニジアの国民対話カルテットに拍手を送った。
鷹巣さんは発表直後、「受賞された団体に心からの祝意と敬意を表したいと思います」とコメント。また、安保関連法に触れ、「憲法は危機に直面しているが、国の最高規範である憲法は変わっていない。私たちは、戦争が絶えないこの世の中に憲法9条を輝かせるため、これからも活動を続けていく」と話した。
報道陣からの質問に鷹巣さんは、「昨年は、マララ(・ユスフザイ)さんが平和賞を受賞した。心からうれしかったが、まだ小さな少女に、こんなつらい思いをさせている原因は何だろうと考えるとき、それは戦争であり、そこから貧困や飢餓が生まれている。国際社会は反省をしなければならない。戦争がこの小さな少女を苦しめていることを感じ、だからこそ、憲法9条の素晴らしさをもっともっと世界にアピールしたいと思った。それなのに、日本は真逆の方向に向かっているように思う。今、私たちが声を上げなければと、いてもたってもいられない気持ちでこの場にいる」と語った。
同実行委では今後も、これまで通り100万筆を目指して署名活動を続ける予定だ。