アメリカ旅行は楽しかった。ロサンゼルスからテキサスへ、さらにポートランド、デンバー、サンフランシスコ、サンホゼ、そしてメキシコ、グァダラハラ、ハワイと一人旅があっという間に過ぎ去った。日本で私を知っていた宣教師たちは、私がブロークン・イングリッシュで説教するのを聞いて驚いていた。それでもほとんど通じたと自負している。なぜなら皆が笑ってくれたからだ。
実は生駒聖書学院に入学した時、英語が習えるのを楽しみにしていた。ところがクート師に英語であいさつしたら、「私、日本語ができるだよ。英語はいらない、日本語の聖書を熱心に読むだよ」と、英語を学ぶことを禁じられてしまった。素直だった私は、そのアドバイスに忠実に従った。できない理由をいつまでも人のせいにしていてはいけないが、あの日、「英語は必要だよ。世界中をメッセージして回る牧師になるだよ」とアドバイスされていたら、今ごろはかばん一つで世界の空を飛び回っていたのに、と思わないわけでもない。
サンホゼでは種子島に宣教師として来られ、私を救いに導いたアルビン・ハモンド師を訪ねた。若い時に戦争で破れた鼓膜の手術で入院していた。先生は大きく暖かな愛で、再会を喜んでくれた。キリストの教会のバイブルカレッジで宣教部長の要職にある先生は、それからは来日の度に生駒聖書学院を訪ねたり、電話で話したりしてくれている。先生にとって、種子島時代はとても貧しく、厳しい宣教師生活だった。だから余計に、自分の伝道で救われた私が牧師になり、神学校の院長となっていることを喜び、祝福を祈ってくれた。
いつも宣教師の働きは尊いと思っている。世界宣教のバトンを日本の教会が受け継ぐ時がきたようにも思う。いや受け継がなければ、日本はいつまでも宣教の後進国のままでいることになる。
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榮義之(さかえ・よしゆき)
1941年鹿児島県西之表市(種子島)生まれ。生駒聖書学院院長。現在、35年以上続いている朝日放送のラジオ番組「希望の声」(1008khz、毎週水曜日朝4:35放送)、8つの教会の主任牧師、アフリカ・ケニアでの孤児支援など幅広い宣教活動を展開している。
このコラムで紹介する著書『天の虫けら』(マルコーシュ・パブリケーション)は、98年に出版された同師の自叙伝。高校生で洗礼を受けてから世界宣教に至るまでの、自身の信仰の歩みを振り返る。(Amazon:天の虫けら)