欧米諸国のジャーナリストや人道活動家、また邦人2人を含む無実の人々を斬首した動画に登場した、過激派組織「イスラム国」(IS)で最も悪名高い処刑人「ジハーディ・ジョン」が、他のIS戦闘員が彼を殺すのではないかと恐れ、今は組織から逃れているという。
「ジハーディ・ジョン」の呼び名で知られる、クウェート生まれでロンドン出身のモハメド・エムワジ容疑者は、昨年夏以降にISが公開した一連の動画で、米国人のジェームズ・フォーリー氏、スティーブン・ソトロフ氏、ピーター・カッシグ氏、英国人の人道活動家デービッド・ヘインズ氏、アラン・ヘニング氏、また日本人の湯川遥菜さん、後藤健二さんを斬首した。
英デイリー・エクスプレス紙(電子版)とのインタビューで、ある匿名の情報提供者は、エムワジ容疑者が数週間前、シリアのテロ組織から逃亡したと語った。この情報提供者はまた、ISは「もし彼らにとってエムワジ容疑者が用無しになったと感じたら、石ころか何かのように」彼を捨てるだろうとも述べた。「彼がその犠牲者と同じ運命をたどる可能性もあります」と言う。
ISの動画に登場した覆面の男性を世界が特定するのには数カ月かかった。エムワジ容疑者の長年の友人が米ワシントン・ポスト紙に、「ジハーディ・ジョン」が「疑いなく」エムワジ容疑者だと語ったのは今年2月のことであった。
「彼は私にとって兄弟のような存在でした」と匿名のその友人は語った。「私はあれが彼だと確信しています」
デイリー・エクスプレス紙への情報提供者によれば、エムワジ容疑者は、自身の価値がIS内で下がっていることを知り、恐れているという。
さらに、ISの最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者は最近、組織のイメージを傷つける恐れがあるため、これ以上は斬首動画を公開してはならないと命じた。組織はプロパガンダ動画を投稿することはできるが、処刑の映像を含んではならないと命じたという。
情報提供者はまた、エムワジ容疑者は自分の立場に嫉妬している、他のIS戦闘員が彼を殺そうとしていることを恐れていると述べた。
エムワジ容疑者が英国、またはISの影響が及ばない国に逃亡した場合、無実の人々を殺害した罪で起訴されるとみられる。英ウェストミンスター大学の卒業生であるエムワジ容疑者は現在、シリアの他の武装グループと連絡を取り、身を隠しているとみられている。
エムワジ容疑者の幼なじみの一人は、エムワジ容疑者が自分をイスラム教徒だと思っていること、またイスラム教の信仰の文脈で殺人行為を正当化することを「笑える」ことだと述べた。
「彼は酒を飲み、薬物を吸い、他の少年に暴力を振るっていました」と、その幼なじみはデイリー・エクスプレス紙に語った。「彼が自分を厳格なイスラム教徒だとしている事実は笑えますし、恥ずかしいです。私は彼が祈ったり、イスラム教の装束を着たりしているのを見たことがありません。宗教について話すのを聞いたことすらありません。私自身もイスラム教徒ですから、私は当時のことをとても良く覚えています。当時ギャングがいて、彼はそこに深く関わっていました。このことから、彼は偽善者だと言えるでしょう」