イタリア・フィレンツェにあるサンタ・クローチェ教会大礼拝堂を飾るフレスコ画『聖十字架物語』の一部を原寸大で復元しようとする作業が金沢大で行われており、その復元現場が23日に一般公開された。金沢大では、同教会とイタリアの国立フィレンツェ修復研究所と共同で原画の修復作業を行っており、5年計画の修復が中間地点に差し掛かったことで、同大で進めている復元作業を公開することになった。当日には修復研究所の修復スタッフを招いてのシンポジウムも行われた。
金沢大での復元作業は、原画の修復作業と平行して行われており、当時と同じ技法、顔料が用いられている。復元が進められている壁画は、『聖十字架物語』の一画面である『十字架の発見と検証』(7.3メートル×5メートル)。コンピュータ・グラフィックスによるものではなく、当時の方法、材料を用いた原寸大での壁画復元は世界的にも前例がなく、注目を集めているという。
『聖十字架物語』は、キリストが磔刑に処せられた十字架の木を中心とした物語で、旧約聖書のエデンの園から始まり、7世紀の東ローマ皇帝ヘラクリウスの時代に及ぶ歴史的長編。ジェノヴァの大司教であったヤコポ・ダ・ヴァラジネによって集大成された『黄金伝説』の中に、その内容が記録されている。聖十字架はイタリア語で「サンタ・クローチェ」。1380年頃画家のア−ニョロ・ガッテイが物語の内容を8枚の連作画として描いた。