ノーベル平和賞受賞者であるデズモンド・ツツ元ケープタウン大主教は、今月に予定されている国連総会での死刑執行停止を求める決議案の採決を前に、英紙ガーディアン上で「死刑は基本的人権の侵害」とし、世界的な死刑制度禁止を訴えかけた。
ツツ氏は、世界的に死刑制度を法律上、事実上廃止している国が増えていることに対して、「この世界から死刑が取り除かれつつあることを喜んでいる」と語った。
国際的な人権団体アムネスティー・インターナショナルによれば、法律上死刑を廃止している国は100カ国に上り、10年以上死刑を執行していない国などを事実上の死刑廃止国として含めると、現在133カ国で死刑が廃止されている。一方、死刑をいまだに行っている国は、米国、日本、中国などを含めて64カ国ある。
「死刑は、ある条件の下では殺すことも許容できる、とするものであり、報復の原理を助長するものである」と述べ、「この循環を断ち切るためには、我々は政府認定の暴力を取り除かなければならない」と語った。
今月初めには、欧州連合(EU)を中心とする70カ国が支持する形で、死刑制度執行停止を求める決議案が国連総会に提出された。決議案では、死刑執行一時停止、死刑適用の漸進的な削減、死刑囚の人権に対する尊重、死刑廃止国の制度再導入の停止などを求めている。
ツツ氏は、「多くの国々で、死刑が貧しい人々や、人種的、民族的少数派に対して偏って用いられている」と述べ、「死刑はしばしば政治的抑圧の道具として用いられ、独裁的に押し付けられている。後戻りすることの出来ない処罰であり、必然的に、いかなる罪も犯していない人々を処刑するという結果につながる」と死刑制度の問題点を指摘した。
ツツ氏は、「年々、死刑制度廃止は従わざるを得ないものとなってきている」とし、「今は世界的に死刑を廃止するときとなった」と述べた。