【CJC=東京】アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所をどう保存するか、それには難問が山積している、と米紙ニューヨーク・タイムズが伝えたことを朝日新聞電子版が紹介している。
同収容所の保存財団には、指針となる哲学がある。「真実の証しとして保つ」ということ。具体的には、すべてをそのままにしておくということである。
ただこの指針には、保存技術の観点からはいくつもの難問が立ちはだかる。
れんが建ての収容施設は崩れかけている。これを建て直せば、複製の施設で再現したようになってしまう。それに収容所のすべての資料を保存するには、専門の担当者を置く必要がある。
保存の長期的な基本計画を担当しているアンナ・ロプシュカ氏(31)は「私たちがしていることは、この収容所をつくったナチスの当初の考えとは、ある意味で反対のこと」と言う。「彼らはこれをずっと続けようとは思っていなかっただろうけど、わたしたちはここがずっと続くようにする」。
そのための大原則は「必要最低限の介入」。建築物などの対象物件を保存はするが、美化はしない。生き残った人が少なくなっていくだけに、その重要性は増していくからだ。