日本キリスト教協議会(NCC)は23日と24日、日本基督教団霊南坂教会(東京都港区)で第39回総会を開催した。
23日午後には、議長の小橋孝一氏(日本基督教団牧師)、副議長の渡部信氏(日本聖書協会総主事)、総幹事の網中彰子氏(日本基督教団牧師)が再任され、2期目を務めることが決まった。また、もう一人の副議長に矢萩新一氏(日本聖公会管区事務所総主事・司祭)、書記に金迅野(キム・シンヤ)氏(在日大韓基督教会牧師)、伊藤剛士(ごうし)氏(日本YMCA同盟、東京YMCA主事)が新しく選任された。
今総会期のテーマは、「十字架の主の御言葉に聴き従いつつ、共に進む」(マタイ16:24)に決まり、下記の活動方針が過半数の賛成により承認された。
- 共に伝道しよう(マルコ1:14〜15)
- 社会の中で共に証していこう(マタイ26:51〜52)
- 広く世界の友と連携していこう(使徒2:7〜11)
- NCC創立70年(2018年)に向けて、日本宣教会議・シンポジウムを開催する(2016年)
- 宗教改革500周年記念事業を推進する(2017年)
- 各委員会活動をさらに充実し、それぞれになっている課題を推進する
- 機構・財政について(「部」の見直しと規約の改正、寄付・賛同金の拡充、活動の発信、そして1〜7にふさわしい組織・機構・役割分担)
小橋議長は今総会期の活動方針について、「日本社会に潜んでいる罪を悔い改めよと訴える責任が(NCCには)ある」と語った。一方、活動方針については、戦後70年について明記してほしいという意見や、旧日本軍による慰安婦問題について書かれていないという指摘も出された。
また、老朽化のため建て直しが予定されている日本キリスト教会館については、同会館に代わるエキュメニカルセンターの新築にあたって、NCCがリーダーシップと責任を担うべきだという意見が出されたほか、エキュメニズムについてのNCCの強い気持ちを何らかの形で表現してほしいという意見なども出た。
この他、議長報告、総幹事報告、常議員会報告、またエキュメニカル震災対策室や教育部などの各部報告、2人の会計監査委員の選任、2011〜13年度の決算報告なども承認された。一方、フィリピン委員会は活動をしばらく休止することが伝えられた。
今総会の特別プログラムである「東日本大震災支援活動報告」では、初めに在日大韓基督教会在日韓国人問題研究所の佐藤信行氏が、外国人被災者支援プロジェクトについて報告した。
佐藤氏は、言葉の壁がある外国人被災者のために2011年9月に同プロジェクトを立ち上げた。2012年3月には外国人被災者向けのアンケートを行い、同年7月には被災者である高校生に就学支援を行った。また、「福島移住女性支援ネットワーク」(EIWAN)を結成し、移住女性とその子どもたちの教育支援や保養などの活動を行ったことを報告した。
続いて、日本YWCAの西原美香子総幹事が、同団体の被災者支援活動「com7300」について報告した。女性と子どもの安全と安心のために、被災者受け入れのための住居支援としてのセカンドハウスプログラムや、心と身体をリフレッシュするための保養プログラム、地域の女性と子どものための活動スペース「カーロふくしま」などの活動を、数分間の映像スライドショーを交えて紹介。寄付を含めた支援を訴えた。
また、南西ドイツ宣教会(EMS)宣教師で、2013年3月に被災地支援のためにエキュメニカル・コワーカー(共働者)として来日したサビーネ・クルーガー氏が、福島で昨年行われたYWCAのプログラムで英語を教えた時の体験などを報告した。
一方、東日本大震災の対策機関として2011年に設立されたNCCエキュメニカル震災対策室(JEDRO)と同運営委員会は、3月末で活動を終えることが24日、賛成多数で可決された。
JEDRO室長でもある小橋議長は、「海外からいただいた資金がもうない。JEDROとしての活動はこれで終了せざるを得ない」と説明。「今後のためにこれからも広く発信していく。(これまでのJEDROの活動について)海外の教会にきちんと報告しなくてはならない」と述べ、JEDROに代わる今後のあり方については新しい常議員会に委ねた。
一方、23日には、JEDROに協力してきたキリスト教国際的援助団体「チャーチ・ワールド・サービス」(CWS)アジア太平洋緊急対応部長兼CWSジャパン事務局長の小美野剛氏が、「ポストJEDRO企画案」について説明。JEDROの後継版となる超教派プラットフォーム「ポストJEDROプラットフォーム」を作ることを提案していた。また、JEDRO室長補佐の外崎孝(とのさき・たかし)氏(日本基督教団牧師)は、被災者への支援活動は「過去形ではなく現在形であり未来形でもある」と強調していた。
この他、総会ではヘイトスピーチの録画が数分間上映され、在日大韓基督教会の金性済(キム・ソンジェ)牧師が、第3回「マイノリティ問題と宣教」国際会議への参加を呼び掛けた。同会議は、世界教会協議会(WCC)の後援を受け同教会が主催して、11月18日に在日本韓国YMCAを会場に行われる。金牧師は、「ヘイトスピーチを生み出していく社会と政治に、私たちは福音信仰に固く立ってこの会議をいかに形作っていくか準備している」と語った。
また、NCC教育部の石田学理事長は、2017年に設立110周年を迎える同部の「キリスト教と平和教育史料センター」(仮称)開設に向けたアピールを行った。
なお、総会には、韓国基督教教会協議会(NCCK)のキム・ヨンジュ総幹事と日本山妙法寺僧侶の武田隆雄上人(宗教者九条の和事務局)、庭野平和財団の野口陽一専務理事、日本福音同盟(JEA)の中台孝雄理事長が出席し、来賓としてあいさつした。