名古屋市、大須観音駅から徒歩2分。そこに「ゴスペルカフェY’s」はある。舌触りの最高なふわふわのパンケーキ、コーヒー通をうならせるほどの極上のコーヒー、朝引き立ての粗引きミンチを使ったキーマカレーや名古屋名物の味噌カツなど、どれも魅力的なメニューばかり。周りはビジネス街で、仕事の昼休み時間には、疲れを癒やしにくるサラリーマンやOL、また、近所に住む常連客でランチの時間はにぎわう。このオシャレなカフェを運営しているのは、れっきとした教会だ。
「ヒズコール(His Call =イエスの招き)」と名づけられたこの教会は、2004年に、細江政人牧師・由美牧師夫妻によって開拓が始まった。開拓当時、教会と言うと警戒心を持たれてしまうことも多かったが、ゴスペルの人気の根強さを知り、まずはゴスペル教室「ゴスペルジュビリー」として活動をスタート。ゴスペルを通して、神の愛を伝え続けた。そうして始まったヒズコールチャーチは、現在延べ250人が礼拝に参加するまで成長を遂げ、今年、新たに近郊の豊田市にまで活動を広げ、新たな教会開拓をスタートさせた。
最初は名古屋市でも郊外の方で、場所を借りながらの礼拝だった。3年前、これから日本を建ち上げていく次世代に福音を届けたいというビジョンから、名古屋市の中心地、栄に場所を移して礼拝をスタート。昨年、JR名古屋駅から車で4分の繁華街という好条件の物件と出会い、今年3月に3階建ての現在の教会堂が完成した。「ゴスペルカフェY’s」は、その1階部分を利用して運営している。
「まだ救われていない全ての人々を、キリストの救いへと導くこと」をビジョンの一つとして掲げ、「地域の人や、若い世代の人、教会にまだ訪れたことがない人たちが、『ここにいたいと思っていただけるような空間』をコンセプトに、デザインやメニューを作りました」と、主任牧師の細江政人牧師は語る。その言葉の通り、牧師夫妻の細やかな心配りが施されたその空間は、初めて来た人もリラックスしてくつろげ、常連客も多い。
「名古屋は喫茶店文化やモーニングの文化がある。そのような文化とマッチングし、当初はビジネスマンの利用が多かった」と話すのは、越中秀起牧師。越中牧師は教会の運営戦略を練る傍ら、近郊の豊田市の開拓を担当している。
ヒズコールチャーチは、ビジョンの一つに「全ての世代が、次世代を育てる」ことを掲げており、主に大学生に対する伝道活動を行っている。礼拝も、通常の礼拝と「Jmix」と呼ばれるユース礼拝をこれまで行ってきた。また、11月下旬からは、この2回の礼拝に加え、社会人を意識した、アコースティックバンドで賛美を行う礼拝も新たに始めた。
「いろいろなスタイルを用いて、社会人が教会の文化を受け入れることによって、彼らが若い世代を建て上げ、応援し始める」と越中牧師は言う。そのさまざまなスタイルの一つとして、新しい教会堂を建てるときに何が必要かを考えたそうだ。そして、集まってきた人たちが落ち着いて話したり、食事をしたりできる場所のニーズがあったため、カフェを始めた。
その後、地域の人々にさらに密着していくため、さまざまな声を取り入れることで、メニューを工夫し、営業時間を拡大、1階にあるキッズルームも開放し、Wi-Fiや電源を完備、駐車場の併設、ペットも一緒に楽しめるスペースや、喫煙席なども準備し、現在のスタイルになった。
しかし、このようなスタイルも全て「営業活動ではなく、伝道が目的。地域や新しい人たちが興味を持ってもらえるような戦略」という。現在は、カフェの案内をグルメ情報誌やホームページに載せるなどし、さまざまな客層が集まるようになっている。キッズルームの利用客が、教会のキッズイベントや日曜日の礼拝に訪れることも少なくないという。
このような戦略について「聖書に書いてある通り、鳩のような純真さを忘れてはいけない。でも蛇のような賢くあることも重要。クリスチャンは世の光となる存在。世の中に流されるのではなく、影響を与える存在になる必要がある」と話す。
カフェのスタッフは全員が教会のメンバー。自然な流れで、お客との関係を築き、伝道につながっている。このように、牧師、スタッフが一丸となって伝道活動に携わるヒズコール。来年1月4日(日)には、新年を祝うニューイヤーサービスを行う。ますますにぎやかな年明けとなりそうだ。