世界教会協議会(WCC)の加盟教会であるキプロス正教会は、地中海の同国にある他の諸教会と共に同島の一致を求める一方で、まず40年前にトルコの侵攻によって負わされた傷を癒すことが課題だと認識している。
WCC執行委員会の参加者たちが、キプロスのトルコ領地域にあるファマグスタのアギオス・ゲルギオス・エグゾリノス教会で、境界線を取り除くことに向けて歩みを進めることによって、彼らの島の分断がなくなるようにと祈った。11月23日、その祈りはキプロスのコンスタンティア・アモホストス教区の霊的指導者であるバシリオス府主教・博士によって導かれた。
バシリオス府主教はトルコによる1974年のキプロス侵攻で、愛する人たちを何人も失った。しかし、ギリシャ系キプロス人とトルコ系キプロス人の両方にとって、平和的で一致した島のための彼の希望は、他の共同体と共に栄え続けている。
バシリオス府主教の熱意は、2013年にWCC第10回総会で発せられた「正義と平和の巡礼」というテーマと共鳴している。今や40年間も分断されてきたキプロスは、WCC総幹事のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト牧師・博士によって、「正義と平和の巡礼のための停車場」と呼ばれている。
1974年のトルコによるキプロス侵攻によってこの島が分断されてから、北部3分の1にはトルコ系キプロス人が居住しており、南部3分の2にはギリシャ系キプロス人が居住している。国際連合の平和維持軍は、約16万5千人のギリシャ系キプロス人が侵攻時に北部から南部へ、そして約4万5千人のトルコ系キプロス人が南部から北部へと逃げたと推計している。
トルコの侵攻は大規模な破壊を引き起こし、6千人の兵士と非戦闘員が殺された(1974年のキプロスの男性人口の2パーセント)。さらに、1619人の男性と女性が、帰宅することなく行方不明と記録されたが、そのうち1536人はギリシャ系キプロス人、83人がギリシャ人であった。
1983年以来、トルコ領の地域は北キプロス・トルコ共和国として独立を宣言してきたが、これを承認したのは、同島北部で3万人を超える部隊を維持しているトルコだけである。
同島の分断はバシリオス府主教に深い苦悩を引き起こしたが、府主教自身は現在トルコ領となっている地域で青年時代を過ごした。教会の催し物に出席したいとき、その度に境界線を超えるということが、彼にとってはいまだに慣れないことである。「キプロス正教会の主教として、私は北キプロスでいくつかの教会の祝祭に出席できますが、この島のこの地域が私の故郷ではないと言われて、入るために許可が必要だというのは、私にとって最も苦しい体験です」と、バシリオス府主教は語った。
破壊、分断、そして一致のための希望
バシリオス府主教は、キプロスの文化的・宗教的遺産がトルコによる侵攻の結果として破壊されてしまったと説明する。同府主教が言うには、この破壊には、考古学的な場所や修道院、古代の諸教会、墓地、そして重要な記念碑の破壊が含まれている。「これらの礼拝の場所は信仰者たちにとって極めて貴重なものなのです。なぜなら彼らの生活の出来事がこれらの場所にしるされているからです」と彼は述べた。この占領地域にある500を超える教会が、聖画やフレスコ壁画、モザイク画と共に、神聖を汚されたことが分かっている。
「これらの傷を癒すことはたやすいことではありません」とバシリオス府主教は言う。「キプロスにいるどんな家族にも、トルコによる侵攻の時代に負わされた傷を見つけることができます」。続けて、「私たちは行方不明になってしまった人たちを知っていますし、殺されてしまった人たちも知っています。私は叔父やいとこを含めて、家族を5人も失いました。ですから、繰り返しになりますが、和解に向けた歩みを進めるというのはたやすいことではないのです。それでも、私たちはそれをしなければならないのです」と語った。
「私たちは、自国の一致のために、和解と平和そして正義に向けて働かなければなりません」
バシリオス府主教は、政治的解決に向けた道を開くためには、「実際の行動」が必要だと語り続けた。しかし、両者とも解決策を見つけることを失敗してしまっていた。境界線を解くことに向けた第一歩は、普通の人たち同士の関係を築き直すことだと、バシリオス府主教は言う。これらの関係を強めるために、宗教指導者たちはキプロスの一致を促進する環境を作るのを助けなければならない。
キプロスの再統一のための願いは、ギリシャ系キプロス人が出席しトルコ系キプロス人が支援している日曜日のアギオス・ゲルギオス・エグゾリノス教会のように、教会の祝祭に反映されている。
キプロス正教会は同国にある他の諸教会に加わって一致を願い求めている。
バシリオス府主教は、11月20日から26日まで、キプロスのパラリムニで行われているWCC執行委員会の会合でホスト役を務めている。同府主教は、WCCの主な統治機構の一つであるWCC中央委員会の委員であり、WCC信仰と職制委員会の前議長でもある。
※ この記事は、WCCが11月24日に公式サイトで伝えたものを本紙が日本語に訳したものです。