【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は6月4日から6日まで、キプロス共和国の司牧訪問、パフォス、ニコシア、ラルナカの3都市を訪れた。教皇がキプロスを訪問するのは史上初めて。今回の訪問はベネディクト教皇の16回目の海外司牧訪問。
4日午後、空路パフォスに到着した教皇は、ディミトリス・フリストフィアス大統領と共に歓迎式に空港での歓迎式に臨んだ。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、栄光ある歴史を持ち、文化と宗教の交差路としての役割を果たしてきたキプロスが、その精神遺産をヨーロッパや世界に反映させることを期待する、と挨拶した。
使徒パウロとバルナバの足跡をたどる巡礼者としてキプロスを訪れたと述べた教皇は、この訪問で正教会をはじめ諸宗教との対話と友好を強めたいと語った。
その後、教皇はパフォス市内の『アギア・キリアキ・クリソポリティッサ教会』へ移動、キプロス正教会クリゾストモス2世大主教に迎えられて、聖堂内で祈った後、教会前で正教会とカトリック教会関係者による集いに参加した。
教皇は。キリストのすべての弟子の一致を恵みとして神に祈り求め、今日の世界に福音の証しを強めなくてはならないと述べた。
4世紀の初代バシリカ跡に中世以降建てられた同教会は、正教会に属するが、カトリックと聖公会の典礼にも開かれている。
教皇は5日午前、ニコシア市内の聖マロン小学校の校庭で行われた集いに出席した。キプロスの各教会から聖職者、修道者、信者らが参加した。
教皇は、キプロスの信者との温かい出会いに感謝を述べ、これからもキリストにおける信仰を固く保ち、使徒的伝統に忠実であるよう励ますと共に、皆への祈りと支えを約束した。特に、教皇は、同国のカトリック教会が他のキリスト教教会間との友好・協力を育てると同時に、キリスト教以外の宗教との対話をも進することで、平和な社会の構築に貢献して欲しいと希望した。
トルコが支配する北部から訪れたマロン派の信者たちに「キリスト者は希望の民」と語った教皇は、分裂に苦しむキプロス島のために善意の人々の努力を励まし、すべての住民によりよい生活が一日も早く訪れるよう祈った。
その後、大統領官邸でフリストフィアス大統領と会談、続いて同国の政治関係者・外交団と会見し、キプロスが文明の共生の模範、民族・文化の交流の場として発展することを願った。その後、キプロス大主教館にキプロス正教会クリゾストモス2世大主教を表敬訪問した。同大主教は2007年6月にバチカンを公式訪問し、教皇と会見している。
教皇はキプロス正教会が東西の教会間の対話に積極的な姿勢を打ち出していることを称賛、キプロスのすべての住民が神の助けのもと賢明さをもって諸問題の正しい解決と、平和と和解、信教の自由を含む基本的権利がすべての人に保証される社会の構築に努力することを祈り、闘争状態の続く中東に平和がもたらされるよう共に働き、困難な状況にある聖地のキリスト者たちが平和と発展を享受することができるよう支え祈りたいと語った。
この後、教皇はキプロス北部から訪れたイスラム教スフィ派指導者シャイフ・モハメド・ナジム・アビル・アルハカニ師と会見した。
キプロス訪問の最終日の6日朝、教皇はエレフテリア・スポーツセンターでミサを行った。シリア、ヨルダン、レバノンからの巡礼、インド、スリランカ、フィリピンからの移住労働者も含め約1万人が参加した。中東シノドス参加国の各典礼派からの使節も一堂に会し、地域に息づくキリスト教の長い歴史とその豊かな伝統を示すものとなった。式中、ギリシャ語、ラテン語、アラブ語、アルメニア語、英語など多言語が使用された。
多くの国の教会で『キリストの聖体』が祝われたこの日、教皇はミサの中でキリストの聖体をテーマに説教を行った。
式の中で、教皇は代表の司教らに『中東のための特別シノドス』の討議要綱を手渡され、この会議が中東のキリスト教共同体が置かれた状況に対する国際社会の認識を高め、長い闘争によって苦しむこの地に正しい恒久的な解決を求める努力を励ますものとなるようにとの希望を表明した。
教皇はこの席で、緊張の続く中東地域、特に聖地に対するアピールを新たにされ、流血の惨事をこれ以上広げないためにも、国際社会のいっそうの働きかけを要望した。
中東各地から集まった司教たちと昼食後、教皇は、マロン典礼教会大聖堂を訪問した。
教皇は同日夕、ラルナカ空港での送別式を経て、キプロス航空機で帰国した。