バプテストの牧師やカトリックの枢機卿、そしてクリスチャンの学生たちが、香港で自由民主主義を求める抗議の最前線にいる。
「愛と平和で中環占拠(Occupy Central with Love and Peace)」運動の創始者たちの中には、30年以上も香港の真の民主主義のために闘ってきたバプテストの朱耀明牧師がいる。デモに先立って、朱牧師は香港の主要英字紙であるサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙に対し、自分は自由で公正な選挙の過程のために「犠牲を払う」覚悟ができていると語った。
「私はもう70歳。私はただ、私たちの次の世代がもっと楽に暮らせるように、いくつかの障害を取り除き、彼らのためにもっと滑らかな道を開くことができればという希望を持って出てきているだけです」と彼は述べた。
何万人もの人々が香港の街に溢れ出し、中国共産党への忠誠を確実にするために政治の候補者選出をするという中国政府の主張に抗議している。開かれた選挙が2017年に行なわれることが望まれていたが、これに逆らう動議の決定が8月に承認された。地元の人々の多くは、これはいつの日か香港に「普通選挙」を認めるという中国政府の約束と矛盾していると思っている。
「中環占拠」によってすでに組織されている大規模で平和的な運動が表出されたのは、大学生たちが授業への参加を拒否し始め、9月22日に添馬公園にある香港政府本庁舎の外でデモが開かれた後のことだ。これらのデモは続き、何万人もの支持を集め、9月28日には装備した機動隊が、催涙ガスや唐辛子スプレーを使って抗議活動家たちを追い散らそうとした。
高校生たちの大きな代表団もこのデモに参加した。クリスチャンであるジョシュア・ウォン(黃之鋒)さん(17)は、学民思潮(Scholarism)という学生活動家たちの運動のリーダーで、過去には中国共産党が指導した「徳育及び国民教育」と題するカリキュラムへの反対運動に成功した。
報道によれば、ウォンさんは1200人の学生を動員して9月26日の抗議行動に参加し、その週末には香港学生会総会の2人のリーダーたちと共に逮捕された。
国営メディアから「過激派」とあだ名を付けられたものの、ウォンさんは罪に問われることなく釈放された。
「闘いの一つ一つを、恐らく最後の闘いとなるだろうと見なければならない。そうすることによってのみ、(民主主義のために)闘う決意ができるだろう」と、彼は9月の第4週目にCNNに語っていた。
しかしながら、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、香港の主要なキリスト教会の間では一連の抗議運動について意見が分かれているという。
9月21日に行われた抗議活動家たちに対する演説の中で、「中環占拠」運動の主要人物の一人とされてきたカトリックの香港前司教である陳日君枢機卿は、香港の全てのカトリック信徒には政治に「関わる権利と義務がある」と述べた。「参加の程度は様々かもしれないが」と彼は付け加えた。
プロテスタントの神学者であるローズ・ウー氏もまたデモの参加者たちに対し、「イエスの十字架は政治的な意味を持つ」と語り、民主主義と政治的自由のために声を大にするよう促した。
ところが、聖公会のポール・クウォン(鄺保羅)大主教は、7月の説教の中で、政治論争に立ち入らないよう懇願しているように見えた。
彼は、イエス自身が十字架の上で沈黙していたのに、なぜ人々が「こんなにも声を上げるのか」と問い掛けたのだった。
同大主教はその後、イエスの沈黙はそれ自体が「平和的かつ寛容で受容的な愛の声」であったと、説明を余儀なくされた。もっとも、彼は抗議をしたい人たちは合法的にそうするべきだと主張してもいた。
香港城市大学の鄭宇碩教授(政治学)は、ユニオン・オブ・カトリック・アジアン(UCA)ニュースに対し、民主主義を支持する運動を支えているクリスチャンたちは、中国の中央政府によって課される宗教への規制からの自由を求めていることから、その割合が高いと語った。
「キリスト教の信仰を持つ人たちは中国共産党に対する強い不信感を持っています。なぜなら、中国共産党はもちろん無神論者の党であることが確実だからです。私が思うに、クリスチャンが、当然、物質的なものよりも霊的なものにより高い優先順位を与えるというのは、間違いないでしょう」と、鄭氏は語った。
「香港のクリスチャンたちは、経済発展は中国により多くの宗教的寛容をもたらしてこなかったということが分かっているのです。経済発展や、生活水準の改善、外の世界に対する開放にもかかわらず、特にキリスト教に対する寛容は改善しておらず、実はここ最近の2年間に迫害が強まったのです」と、彼は付け加えた。
ソーシャルメディアの利用者たちは黄色いリボンの写真を共有し始め、抗議に参加する人々のために祈るよう促している。